コンプライアンス研修とは、従業員のコンプライアンス意識を高めるための研修のことです。コンプライアンスを守ることで不祥事を防げるだけでなく、企業価値を高めることにもつながります。コンプライアンス研修が重視される理由や目的、導入手順について説明します。
目次
コンプライアンス研修とは?
コンプライアンス研修とは、従業員のコンプライアンスに対する意識を高めるために行われる研修のことです。従業員一人ひとりが社会的ルール・マナーを守って不祥事を未然に防ぐこと、社会的な信頼獲得により企業価値を高めることを目的に実施します。また、職場の風通しが良くなる効果も期待できます。
そもそもコンプライアンスとは?
コンプライアンス(compliance)とは、日本語では「法令遵守」と訳され、法令を守ることを意味します。ただし、企業において遵守が求められているのは法令だけではありません。就業規則や倫理観・社会規範・社会道徳についても、従業員が遵守する範囲に含まれます。
コンプライアンス違反の主な事例
コンプライアンス違反の例 ・法律・政令・府令・省令等(法令) ・労働時間・休日・賃金の支払い・業務のマニュアルなど(就業規則) ・情報漏えい・ハラスメント・データ改ざん・過労死・食品偽装・耐震偽装など(社会規範等) |
コンプライアンス違反の具体例については、上記をご覧ください。とくに近年話題となっているのは、社会規範や倫理観、道徳観の違反です。従業員のコンプライアンス違反により、不祥事が起こると、企業の社会的信頼は大きく下がってしまいます。
コンプライアンス研修が重視されるようになった背景
近年、企業においてコンプライアンスが重要視されるようになってきました。この背景としては、1990~2000年代相次いで起こった大手企業による不祥事事件が挙げられます。粉飾決算や顧客情報の流出、過労死、個人情報漏洩など、企業の社会的価値を失墜させる事件が数多く起こりました。
いずれも企業や従業員のコンプライアンス意識の低さがベースにあります。企業に対する社会の目も厳しくなっており、コンプライアンス研修の必要性はますます高まると考えられます。
コンプライアンス研修を行う目的・意義
コンプライアンス研修は、内部統制を図ることと従業員にルールを共有させること、従業員のコンプライアンス意識を高めることを目的として実施します。それぞれの目的について簡単に説明します。
内部統制を図れる
内部統制とは、社内であらかじめ対応を決めておくことを指します。コンプライアンス違反が起こりやすい場面や状況ごとの対応を従業員全員が理解していると、コンプライアンスが問われる状況になったときも、すべての従業員が正しい行動を取れるようになります。
また、内部統制が取れていると、不祥事が起こりにくくなるだけでなく、起きた際の被害を抑えられます。
社会および社内のルールを理解できる
会社に入ることで社内および社会で求められるルールが身に付く訳ではありません。特に新入社員は社会の基本的なルールへの認識が足りていない場合があるため、軽はずみな行動が重大なコンプライアンス違反につながってしまう恐れがあります。また中途社員は前職と現職のルールに齟齬がある場合も多く、コンプライアンス研修を行うことで社内ルールの共有を行うことが求められます。
また、既存社員においても、時代や価値観の変化にともない変化するルールの共有を適切な頻度で行えるようにしましょう。
従業員のコンプライアンス意識が高まる
研修を受けることで、社内全体がコンプライアンスに敏感になります。また、常にコンプライアンスを意識するようになり、リスク回避に向けた行動を自然と取れるようになる点もメリットです。
コンプライアンス違反が起こったとき、隠す対応がもっとも望ましくありません。研修により適切な対応ができるようになると、隠ぺいやそれによって問題が大きくなることを防げます。
コンプライアンス研修の導入手順
1.研修に関する担当者を決める 2.コンプライアンスに関する規程を決める 3.規程を従業員に周知する 4.研修のテーマを決める 5.研修の種類を決める 6.環境を決めて実施する |
研修会社に依頼し、コンプライアンス研修を実施すればよいというわけではありません。コンプライアンス研修を実施するためには、上記の順序に沿って丁寧に準備することが必要です。
研修に関する担当者を決める
コンプライアンス研修全体を進めていくための、社内の担当者を決めます。コンプライアンス研修の担当者には特別な資格は必要ありません。しかし、責任を持って進められる能力を有するだけでなく、コンプライアンス研修の重要性を正しく認識していることが求められます。
コンプライアンスに関する規程を決める
研修を実施する前に、社内においてコンプライアンスに関する規程を明確にしておくことが必要です。また、具体的にコンプライアンスに関する規程を定めることで、従業員が従いやすくなるだけでなく、規程違反をした従業員に対して注意や対処をしやすくなります。
規程を従業員に周知する
コンプライアンスに関する規程を定めるだけでなく、従業員がコンプライアンスの線引きをはっきりと認識できるように周知することが大切です。中途半端に周知すると、従業員が業務を遂行する上で不安を感じるかもしれません。明確な規程を周知し、不安を感じずに働けるようにしておきましょう。
研修のテーマを決める
コンプライアンス研修は、テーマを決めて実施します。場合によっては、コンプライアンス研修を異なるテーマで複数回実施することが求められます。また、社内における階層によってテーマを変えることも必要です。
階層によるテーマの違いについては、以下をご覧ください。
階層 | 研修内容 |
---|---|
新入社員 | ・コンプライアンスの基本的な知識 |
係長や主任 | ・コンプライアンスの必要性 ・コンプライアンス違反があったときの対処法 |
管理職 | ・コンプライアンスの必要性 ・コンプライアンス違反があったときの対処法 |
経営層 | ・コンプライアンスが企業に与える影響 ・世の中のコンプライアンス基準 ・社会のなかの自社の立ち位置 |
研修の種類を決める
・社内の担当者による研修 ・派遣講師による研修 ・社外研修 |
社内の担当者による研修
社内研修は、自社で企画・準備を行います。メリットとしては、自社の課題にあわせて実施タイミングやテーマを調整できることです。また、比較的予算が少なく実施できます。社内研修のデメリットは、内容の専門性がやや薄れることおよび研修のテーマ探しや資料準備など、研修担当者の負担が大きいことが挙げられます。
派遣講師による研修
コンプライアンス研修には、講師を呼んで研修してもらう方法もあります。メリットとしては希望のテーマや自社の課題を講師に伝えることで自社に即しながら、専門性とクオリティの高い研修を行えます。一方で講演料や講師の交通費などのコストが比較的高くなることがデメリットとして挙げられます。
社外研修
社外研修は社外で行われるセミナーや研修などに社員が参加することを指します。社外の人材から刺激を受け、成長の機会にもつながることがメリットといえます。一方で多様な参加者にあわせた一般的な内容になりやすく自社の課題との結びつきが薄くなりやすいことがデメリットといえるでしょう。
eラーニング
eラーニングは、インターネット上で動画やテキストを視聴しながら行う学習方式です。メリットとしては、場所を選ばず受講のタイミングを各々調整できることが挙げられます。一方でデメリットとして、研修内容についての質問が対面よりもしづらい点や、運営側が受講管理をその都度行うことが難しく受講者の自主性に委ねられてしまうということが挙げられます。
環境を決めて実施する
まずは研修方式を決めます。オンラインであれば、自由に時間を選べることもあるため、従業員の負担が軽く済みます。しかし、各端末の通信環境を事前に整備しておくことが必要です。
一方、実践をふくむ研修の場合は対面のほうが好ましいです。疑問点を講師にその場で尋ねることができるため、より深い理解を得やすくなります。
社内のコンプライアンス意識を高めよう
従業員のコンプライアンス意識を高めることは、不祥事を防ぐだけでなく、企業価値を高めることでもあります。従業員だけでなく経営陣もコンプライアンス研修を受け、コンプライアンス意識を高めておきましょう。
以下では、人事関係者によって推薦された、コンプライアンス研修に強みを持つ人事コンサルティング会社をご紹介いたします。