本記事では日本で今注目のジョブ型採用に焦点を当てて、一般的な採用方法との違いや、注目される背景などについて解説します。併せて、ジョブ型採用のメリット・デメリット、導入時のステップや注意点についてもご紹介します。
目次
ジョブ型採用とは?一般的な採用方法との違い
日本で一般的に行われてきたジョブ型採用とメンバーシップ型採用は具体的に何が違うのかそれぞれの定義とともに詳しく解説します。
ジョブ型採用とは
ジョブ型採用とは、職務内容を明確に定めて、その職務に見合ったスキルや経験を持つ人を採用する雇用方法のことです。具体的には、企業側が職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)を作成し、あらかじめ必要なスキルや経験、勤務条件を提示した上で雇用契約を結びます。
メンバーシップ型採用とは
一方、メンバーシップ型採用とは、新卒一括採用のように企業の文化や価値観に合った人材を採用する雇用方法のことで、日本では主流の採用方法となっています。メンバーシップ型採用では、人柄や意欲、ポテンシャルなどが基本的な選考基準となり、採用後に適性を判断し、実際の所属部署や勤務地を決めるのが一般的です。
ジョブ型採用とメンバーシップ型採用の違い
ジョブ型採用 | メンバーシップ型採用 | |
募集 | 欠員補充や新規ポジション中心 | 定期採用中心 |
目的 | 業務やプロジェクトに必要な専門性を重視した採用 | 人柄やポテンシャル、企業文化との相性を重視した採用 |
職務内容 | 限定的 職務記述書にて決定 | 総合的 配属先に応じて決定 |
給与 | 職務内容や専門性に応じた給与 | 役職や勤続年数に応じた給与 |
異動・転勤 | 基本的になし | あり |
教育 | 社内教育はない場合が多い | 研修やOJTの制度が充実 |
ジョブ型採用は入社前に職種や給与などが決まっており、職務内容も限定的であるのに対し、メンバーシップ型採用は入社後に具体的な職種や配属先などを決定し、職務内容も総合的である点が、両者の大きな違いです。
ジョブ型採用の現状
2020年のPR TIMESの調査によると、ジョブ型採用に対する日本での認知度は54.2%となっており、欧米ほどには浸透していないのが現状です。
しかし2022年時点では、24.1%の企業が新卒採用にジョブ型採用を取り入れており、2023年から導入予定の企業(2.5%)も合わせると、4社に1社が新卒採用にジョブ型採用を導入していることになり、今後もさらに伸びる可能性があります。
(参照:PR TIMES「4社に1社が、新卒採用に「ジョブ型」を導入。導入企業の半数以上が「適性のある人材の母集団形成」に手ごたえをつかむ/採用担当者アンケート」)
ジョブ型採用が注目される背景
日本でジョブ型採用に注目が集まっている背景には、社会情勢や課題との関係性があります。そこで本章では、ジョブ型採用が注目される背景を以下のように3つ取り上げて解説します。
・人材不足 ・リモートワークの普及 ・ワークライフバランスへの注目 |
人材不足
日本は現在も少子高齢化が加速しており、労働人口の減少による人材不足は深刻な問題です。そのため、各企業も即戦力となるような人材を欲しており、専門的なスキルや経験を持つスペシャリストを集めやすいジョブ型採用が注目されています。
リモートワークの普及
コロナの影響でリモートワークが急速に普及したこともあり、企業の評価制度も成果を軸とした評価方法に移行しつつあります。
その点、ジョブ型採用は、あらかじめ評価基準が明確になっているため、成果を軸とした評価制度とも相性が良く、注目を集めています。
ワークライフバランスへの注目
子育てや介護等の理由で働く時間や場所に制約はあるものの、スキルを活かして働きたいという需要は以前から多くありました。また、働き方改革を機に、昨今はワークライフバランスへの意識も高まっています。
そのような情勢から、多様な働き方にも対応できるジョブ型採用が注目されているのです。
新卒採用でも注目されるジョブ型採用
株式会社学情による2022年卒学生を対象としたアンケートによると、約80%の学生が「ジョブ型採用に興味がある」と回答しました。学生から見れば、仕事内容や配属される部署が明確に示された方が、大学で学んだことを活かしやすく、キャリアプランも立てやすいことから、新卒採用においても、ジョブ型採用に対する注目度は高まっています。
(参照:株式会社学情「あさがくナビ2022会員対象 2022年卒学生の就職意識調査(ジョブ型採用について) 2020年7月版」)
ジョブ型採用のメリット
ジョブ型採用を導入することによって、企業側と労働者側の両方に様々なメリットをもたらします。そこで本章では、ジョブ型採用のメリットをご紹介します。具体的には、以下の5つです。
・業務の効率化 ・育成・評価のしやすさ ・即戦力の確保 ・多様な働き方への対応 ・採用ミスマッチの防止 |
業務の効率化
ジョブ型採用では、あらかじめ決められた業務に従事するため、各人が自分の業務に専念することが可能です。また、成果がそのまま評価に反映されるため、労働者も自発的にスキルアップを図るようになり、ひいては業務の効率化につながることが期待できます。
育成・評価のしやすさ
ジョブ型採用では、業務内容が定まっている関係上、必要なスキルが明確になっており、目標や成果の数値化も比較的容易です。そのため、企業側も育成や評価がしやすくなっています。
即戦力の確保
ジョブ型採用では、あらかじめ必要なスキルや経験を明確にした上で人材募集を行うため、企業の求める人材が集まりやすく、結果的に即戦力の人材確保に期待ができます。
多様な働き方への対応
ジョブ型採用は業務内容が明確化されており、成果に応じた評価をするため、細かい勤怠管理等は基本的に不要です。そのため、リモートワークや子育て・介護との両立とも相性が良く、多様な働き方に対応が可能となっています。
採用ミスマッチの防止
ジョブ型採用では、職務内容だけでなく、勤務地や勤務時間などの労働条件も明確に示されているため、求職者側も入社後のイメージがしやすく、採用ミスマッチの防止に効果が期待できます。
ジョブ型採用のデメリット
ジョブ型採用には多くのメリットがある反面、デメリットも存在するため、注意が必要です。
そこで本章では、ジョブ型採用のデメリットをご紹介します。具体的には、以下の3つです。
・人材が定着しにくい ・採用の難易度が高まる ・範囲外の仕事を依頼できない |
人材が定着しにくい
ジョブ型採用では、労働者側は職務内容によって就業先を選択することになるため、企業に対する不安や不満があると、より条件の良い職場に転職されるケースも多く、人材が定着しにくい点がデメリットと言えます。
採用の難易度が高まる
ジョブ型採用では、スキルや経験に細かい条件を付けて人材を募集します。そのため、場合によっては応募のハードルが高まってしまい、採用が難航するケースもあるため、注意が必要です。
範囲外の仕事を依頼できない
ジョブ型採用では、労働者は決まった職務内容に従事することになるため、範囲外の仕事を依頼できない点もデメリットとして挙げられます。転勤や異動を命じても拒否されるケースが多く、ゼネラリストとしての育成は難しいでしょう。
ジョブ型採用に向いている企業
ジョブ型採用はその性質上、専門的な知識や技術が求められる業務との相性が良いと言えます。よって、IT企業や製造業を営む企業に向いていると言えるでしょう。また、大企業の多くは縦割り分業制となっており、業務の分担や求める人材像を明確にしやすいことから、ジョブ型採用は大企業とも相性が良いと言えます。
ジョブ型採用を導入する企業事例
日立製作所
日立製作所は、2021年から管理職を対象にしたジョブ型人財マネジメントの基盤となる職務記述書(JD)を導入しています。2022年7月からは一般社員にも対象を広げ、自らのキャリアを選択できるようにしています。
カゴメ株式会社
カゴメ株式会社は、早くからジョブ型雇用へ移行し成功しています。具体的には、2013年から、管理職を対象にしたジョブ型雇用制度を導入。役員や部長、課長などの役職名を廃止し、職務内容や責任範囲に応じたジョブグレードを設定しています。また、国内外共通の職務等級(グローバル・ジョブ・グレード)を設けることによって、グローバルな人材育成や活躍の場を提供しています。
KDDI株式会社
KDDI株式会社は2019年からジョブ型の新卒採用を始め、2020年8月には働いた時間ではなく成果や挑戦および能力を評価し、処遇に反映することを目的とした「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入しました。社員は自分の能力や志向に合った職種に応募でき、評価も成果や能力に応じて公正に受けることができます。
ジョブ型採用を導入するためのステップ
・業務内容の把握 ・職務記述書の作成 ・評価基準の構築 |
業務内容の把握
ジョブ型採用を導入するにあたって、まずは業務内容の把握が必要となります。具体的には、職務の内容と範囲を明確にした上で、勤務時間や報酬、必要なスキルなどを洗い出しましょう。その際は、現場の責任者などにヒアリングをすることも大切です。
職務記述書の作成
続いて、職務の内容や雇用条件等を記載した職務記述書を作成します。職務記述書はなるべく明確に記載しておく必要がありますが、条件を細かく設定し過ぎると、応募のハードルが高くなってしまう恐れがあるため、面接で相談できる余地もある程度は残しておきましょう。
評価基準の決定
人材を確保できたら、雇用前に評価制度を構築しておく必要があります。評価制度が曖昧なまま雇用してしまうと、労働者との間でトラブルになるケースもあるため、必ず雇用前に評価基準を決定しておきましょう。
ジョブ型採用を導入する際の注意点
いきなり全ての職種をジョブ型採用にしようとすると、社内で混乱が生じる可能性があります。そのため、まずは職種別採用の導入から始めたり、段階的にジョブ型採用へと移行していく流れがいいでしょう。
ジョブ型採用を導入して、優秀な人材の確保を
ジョブ型採用は即戦力の人材を集めやすく、多様な働き方にも対応しやすいため、今後もより注目度が高まっていくことが予測されます。ジョブ型採用をいち早く導入できれば、人材採用の競争が激化している昨今においても、優秀な人材を確保しやすくなります。人材確保に頭を抱えているのであれば、部分的にジョブ型採用を導入することも検討してみましょう。
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