公益財団法人日本生産性本部
東狐 貴一 主任経営コンサルタント
【PROFILE】1987年、日本生産性本部入職。労使関係白書、生産性統計など担当後、雇用システム研究センターにて、企業・大学・自治体等への人事処遇制度の構築、導入支援、評価者訓練・目標設定研修講師を約20年従事。また、「日本的人事制度の変容に関する調査」を1997年から2019年まで16回担当。2022年4月より日本生産性本部コンサルティング部専属コンサルタント。
本書は、人事評価データの分析・検証方法について、具体的なデータを用いながら紹介をしたものです。
2000年代半ば以降、企業競争の源泉は有形資産から無形資産へと移ってきました。2018年に発表されたISO30414 が示すように、無形資産の中でも特に“人的資本”の視える化や価値向上の取り組みの差が競争優位を生み出すようになっています。
日本でも2023年3月から、全ての上場企業は有価証券報告書で、人的資本に関する取り組み指標の開示が義務づけられました。すでに、公表されている指標を見ると、女性管理職比率や従業員一人当たりの研修費用などが多いようです。
しかし、本当に大切なのは、様々な指標をただ開示することではなく、企業価値向上につながるような指標は何か、それを向上させるためにどのような手立てをしているかです。そのためには様々な取り組みにどのくらい効果があるか、検証するための手立てが必要になります。経験や勘ではなく、定量・定性データを使って具体的に計測・検証し、改善し続けるということが求められます。
本書は、人事データの中でも特に評価データに注目してその分析方法のアプローチを試みています。人的資本の現在価値を査定するとしたら、毎期ごとに行われている評価データがそれに該当するのではないかと思います。しかし、その割には評価データの分析や検証はなされていないのが実態です。
人事担当者に自社の評価制度について聞くと、「評価にバラつきがある」と言われます。しかし、バラつきと一言で言っても、どのような状態を指すのかは明確ではありません。そもそもバラつきがない評価の方が不自然です。
やるべきことはバラつきの定量的分析・検証であり、それに基づく課題抽出と改善です。各評価項目や自己評価、1次・2次評価の定量的データを簡単な棒グラフや折れ線グラフにするだけでもいろいろな課題が見えてきます。
本書では、主としてExcelを使って基本統計量や項目間相関、重回帰分析の方法やデータの解釈を紹介しています。自社の評価制度を見直す際の一助となれば幸いです。
東狐貴一 著
公益財団法人 日本生産性本部 生産性労働情報センター
1,200円+税