「体感型インターンシップ」で挑戦する気概のある学生を見出す【アシスト】

システムの導入から運用開始後も継続して技術的支援を行うなど、きめ細かなサポート体制で顧客の課題解決に貢献するアシスト。「人」が唯一かつ最も重要な経営資源と位置づけて“人財”の採用に力を入れている。同社で採用を担当する伊賀光映氏に、採用に対する考え方や取り組みなどを聞いた。

アシスト

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伊賀 光映 経営企画室人事企画課主任

社員に求める能力や採用に対する考え方を教えてください。

当社は、「パッケージ・インテグレーター」として世界中の優れたソフトウエアを発掘し国内で販売しています。

最適なソフトウエアとサービスを組み合わせで、お客様が実現したいことをシステム面からご支援することで、お客様に確実な成果を上げていただくことが重要と考えています。 そのために、システムの導入から運用開始後も継続して技術的支援を行うなど、きめ細かなサポート体制をとっています。

ビジネスの変化が激しい中で、徹底的な顧客目線とヒアリングによる提案やサポートを行うため、社員には高いコミュニケーション能力が求められます。 採用については、企業理念を文書化した小冊子「哲学と信念」でも触れられている通り、「有能で行動力があり意欲的、自己の向上を望む人」「周囲の人に丁寧で温かく、思慮深く、役に立ち、気が利き、正直な人」「積極的な人」「チームプレイヤーである人」「結果を重視する人」「コンピュータ・ソフトウエアの商売に興味のある人」という6つの要件を満たした人財を求めています。

この企業理念に共鳴してもらえる方々に大いに才能を発揮いただき、私たちと共に10年後、20年後のアシストで活躍してほしいと考えています。

新卒採用の状況や強化している取り組みを教えてください。

アシストグループには、今年34人の新入社員が入社し、来年は約40人の入社を予定しています。

学生の募集については、意識の高い学生ほど就職ナビサイト以外で企業を探すケースが増えてきているため、さまざまな就職イベントに参加することによって当社のことを知ってもらう機会を増やしています。

さらに、以前から継続的に実施している「サポーター制度」により、社員と学生との座談会や個別面談を和やかな雰囲気の中で行い、当社のことだけでなく学生の就職活動全般の相談にも応えています。

既に同制度により入社した社員が多数在籍しており、後輩にも同様にサポートをした上で入社してもらいたいと自発的に採用活動に取り組んでくれています。また、採用プロジェクトに参加している現場社員だけでなく、それ以外の社員も積極的に協力してくれており、非常に良い循環が生まれています。

新たにインターンシップの取り組みにも挑戦しました。具体的には「経営体感型インターンシップ」と「ビジネス・コンテスト」の2つを実施しています。

1つ目の「経営体感型インターンシップ」は、2日間で当社の現状と過去の経営におけるターニングポイントを体感してもらいながら、学生に「経営者の視点と決断」を追体験してもらうことで、当社の強みや重視している考えの理解を深めてもらう機会としました。

その上で10年後を見据えた新規事業を考案してもらい、単なるアイデアコンテストにならないよう、「なぜアシストが行うのか」を追求しています。

2つ目の「ビジネス・コンテスト」は、「経営体感型インターンシップ」を踏まえ、チームで約2カ月間のフィールドワークにより次の10年間の発展につながる新規事業をまとめる内容となっています。

3C分析やバリューチェーン分析などの各種フレームワークについての講義も行い、本格的な事業分析に基づく、実践さながらの内容です。最終的には、集大成としての発表を当社社長や役員に向けて実施してもらっています。

新卒採用ではインターンシップに力を入れる企業が増えています。

インターンシップに力を入れる理由の1つは、当社のビジネスは会社説明会などだけでは理解を深めてもらうことが難しいという点があります。

多かれ少なかれどの業界も同様ではありますが、IT業界は特に流れが早い業界です。あえて先の見えない厳しい現状もあることを知ってもらうことで、そこに挑戦する気概のある学生を見出したり、そのように成長してもらうことにつながると考えています。

もう1つの理由は、入社後3年以内の離職率の高さが問題となっている昨今、就活生と採用企業とのミスマッチをなくし、学生にとっても、企業にとっても、ベストな相手を見つけられるような取り組みを推進したいとの思いからです。

当社の離職率は現状かなり低いのですが、理念や人・風土に支えられている面も大きく、ミスマッチ防止の取り組みは強化・継続が必要と考えています。

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ミスマッチは、企業側が会社の良い点ばかりを伝えて採用していること、また学生側も事業や仕事について表面的な理解のままで入社を決意してしまったり、会社の未来を自分事と捉えずに経営陣が考えるものという受け身のスタンスで入社することにも起因しています。

当社では「人」が唯一かつ最も重要な経営資源であり、新卒採用のミスマッチは、長期的には事業の根幹に関わると考えています。

そのため、事業内容を一方的に紹介するだけでなく、疑似的に企業経営や過去の大きな決断を体感した上で未来を見据えた新事業を提案してもらうことで、学生にとっても、企業にとっても、プラスの効果がもたらされると確信しているのです。

こうしたインターンシップを行う企業が増え、当社を含めてさまざまな選択肢の中から学生が最適な会社を選択できる社会につながっていけば嬉しい限りです。

人材不足で多くの企業が中途採用に苦戦していますが状況はいかがですか。

今年度は苦しい環境下にありながら中途採用は比較的順調に推移しており、現時点ですでに昨年度の採用人数を上回る実績となっています。採用計画人数を増やしていることもありますが、当社に興味をもってエントリーいただける方が増えています。

エントリー数が増えた理由としては、当社の仕事の内容やスタンスを知ることで興味を持っていただける方が増えていることと、人材紹介会社の方々も積極的に当社を紹介してくださっていることの二つが挙げられます。

例えば、当社が公開型で実施している技術研修を受講した方や、複数企業が関わるプロジェクトを通じて当社を知った方が「この会社はいいな」と感じてエントリーいただくようなケースが多くなっています。

一方、人材紹介会社との連携では、過去には「数打てば当たる」という考え方で紹介してくる会社も一部でありましたが、現在は当社の特徴的な企業理念やビジネスモデルなどをしっかりと理解しているコンサルタントから良い人財が紹介されるようになってきています。Great Place To Workで「働きがいのある会社」としてランクインしたことや、就職・転職口コミサイトであるVorkersで「働きがいのある企業」、「風通しの良い企業」「中途入社社員からの評価が高い企業」としてランクインしたことなども、プラスに働いていると感じています。

また採用プロセスでは、現場連携を重視しています。現場と協力して書類選考を可能な限りスピーディーに行い、かつ面接で確認すべきポイントを共有しています。また、候補者とできるだけ多く面談する機会を設けるようにしています。

中途採用の場合は、応募者も他社と比較しながら転職活動を行っている場合がほとんどですので、相互理解を深めるために対話を重ねることが目的です。そのため、選考のために面接回数を増やすというよりも、内定後のフォローとして面談を行っているケースが多いです。

入社後のキャリア形成の取り組みで工夫されていることは?

当社は4カ月毎の3期制をとっており、評価面談も4カ月毎に実施しています。上司と部下がしっかりとコミュニケーションを図って自分の目標を設定し、実績を振り返りながら経験を積み重ねています。

個人的には、よくある四半期のサイクルはやや短く、また半年では長くに感じており、PDCAサイクルとしては4カ月がちょうどよいスパンではないかと思っています。

また、キャリアに対する新しい考え方を取り入れた人事制度が2015年1月からスタートしています。社員それぞれの役割に応じて評価を行い、本人の役割と会社からの期待を加味し、実績に応じて報酬を支払う(受け取る)関係性を構築するのです。

これにより、若い社員にもさらにチャンスが生まれます。また、マネジャーだけでなく、スペシャリストとしてキャリアを構築していくこともできる複線型のキャリアパスを用意しています。 制度の変更は大きなインパクトがありますので、周知期間を長く設け、役職ごとの説明会も可能な限り実施しました。

ただし、最初から完璧な制度とすることや、想定通りの運用を行うことはそもそも難しい面もありますので、現場からのフィードバックを継続的に行い、ブラッシュアップしていくことが非常に重要と考えています。

最後に、採用担当者として大切にしていることを教えてください。

当社には新しい仲間を迎え入れるための採用活動に全社で取り組むという、協力的な文化が根付いています。

このことは、企業において採用担当者が施策を行う以前に最も大切なことだと感じています。また採用担当として至らぬ点がある中で、本当にありがたいことと感謝しています。

応募者の方々に対しては、新卒・中途採用を問わず、やはりミスマッチを防ぐためにコミュニケーションをできるかぎり密に行うことでしょうか。

時間や採用にかけられるマンパワーに制約がある中で大変ではありますが、この点を省いてしまうと入社後に「こんなはずではなかったのに」となってしまいます。

このようなお互いの不幸な状況を避けるためにも、対話を重ねます。人事だけでなく、現場社員の生の声をしっかりと聞いてもらった上で入社判断をいただくことも非常に重要と認識しています。

それから、採用・入社は入り口であって、ゴールではありません。もっとも重要なことは、社員が入社後にお客様やパートナー企業様に喜んでいただける成果を発揮でき、それが社員個人にとってもやりがいある仕事につながり、満足度の高い人生につながっていくことだと思います。

そのためにも、まだまだ不十分ではありますが、現場社員とのより多く、深いコミュニケーションの積み重ねや、入社後の教育・育成との連携を、もっともっと実現していきたいと考えています。

株式会社アシスト

代表者●代表取締役会長 ビル・トッテン、代表取締役社長 大塚辰男
設立●1972年3月
資本金●6000万円
従業員数●870人(2015年4月現在)
事業内容●パッケージ・ソフトウェアの販売、技術サポート、教育、コンサルティング
住所●東京都千代田区九段北 4-2-1 市ヶ谷東急ビル
売上高●228億円(2014年度)
http://www.ashisuto.co.jp

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