エバンジェリストはIT業界の新しい職種として注目されており、ITのトレンドや最新技術などをわかりやすくユーザーに伝える専門的な人材をそう呼びます。エバンジェリストはIT分野に詳しいだけでなく、企業の内外におけるさまざまなシチュエーションでプレゼンテーションやマーケティング、リサーチといった活動をするためコミュニケーション能力など多様なスキルが必要です。
ドイツの神学者・宗教改革の指導者として知られるマルティン・ルターは、イエスの教えに回帰することを説く自らを「エバァンゲリスト」(福音主義者)と呼びました。キリスト教の「evangelist」(伝道師)が語源ともいわれるように、エバンジェリストはITの情報や技術を広く伝えることが役割です。ITはインターネットの普及とともに公共機関、金融機関、販売業、生産者といった事業者から消費者の一般生活にまで浸透しながらも進歩を続けて複雑化しており、パフォーマンスを十分引き出すには至っていません。そのため自社技術を理解してもらうためにエバンジェリストを設置する企業が出てきました。
IT関連の営業担当が自社のサービスや製品に関心を示す顧客に対して説明を行う場合と違い、エバンジェリストはITにあまり興味が無い可能性さえある不特定多数に向けてアクションを起こし“伝道師”のごとく広めるのが特徴です。ユーザーに向けたセミナーの開催やイベントでプレゼンテーションを行うことにより、一人でも多くに価値を理解してもらうことで自社製品の購入やサービスの利用につなげなければなりません。エバンジェリストは企業の営業や広報という立場ではなく、ITに関する技術や知識を公益性・中立性を保ちながら活動するため、自社製品であってもマイナス面があれば隠さずに説明し、他社製品でもメリットは正しく伝えることを信条としています。
Apple社は1984年にMacintoshを開発した際、その意義を伝えるため「テクニカル・エバンジェリスト」を設置したことで知られ、マイクロソフト社もエバンジェリストを採用しました。現在では日本でも著名なエバンジェリストが活躍しています。これからはIT産業の競争激化に対応するため、エバンジェリストのポストを設置する必要性が高まりそうです。