衛生要因とは、仕事に対して「不満」を抱える要因となるものを指します。反対に仕事に対する「満足」につながる要因となるものを、動機付け要因といいます。この2つの要因によって、仕事に対する満足度が形成されることを、アメリカの臨床心理者フレデリック・ハーズバーグが提唱しています。
衛生要因・動機付け要因は仕事への意欲に大きく関係し、二要因理論とも呼ばれています。
衛生要因は、給与や福利厚生、労働条件や職場の人間関係などが挙げられ、労働環境に対して向けられます。衛生要因となる労働環境が整っていなければ、従業員は不満に感じてしまうのです。
一方、動機付け要因は、業務そのものや達成感、昇進や昇格など、業績や業務内容が承認されることが挙げられ、労働内容に対して向けられます。これらの要素を感じ取れれば、従業員の満足度が上がるといえます。
満足と不満を測っているにも関わらず、2つの要因があるのは、「衛生要因が満たされていれば、仕事に不満がない=満足度が高い」「動機付け要因が満たされれば、仕事への満足度が高い=不満がない」という単純なことではないためです。
ハーズバーグが行った実験では、仕事上で幸福や満足を感じたこと、不幸や不満に感じたことを検証者に質問し、その内容を分析しました。その結果、衛生要因を取り除くことが仕事の満足につながるわけではなく、動機付け要因を満たすことが仕事に対して不満がなくなるわけではないことが判明しました。たとえば、仕事に対しての達成感がなければ高収入であっても満足度は低いという結果から、衛生要因・動機付け要因は異なるベクトルを持っており、複雑に絡み合っていることが読み取れたのです。
衛生要因を取り除ければ、従業員の不満を解消でき離職率の低減にもつながります。会社に不満がある場合には意欲的に働き続けられず、ストレスを抱えることになります。そのような状況では生産性にも影響が出るうえ、退職の可能性も高まります。衛生要因だけではなく、動機付け要因についても同様に改善を講じる必要があります。
衛生要因を取り除き、動機付け要因を満たすといった、両面からアプローチしてバランスよくかつ早期に取り組むことが必要です。二要因はどれも短期間で改善するのは困難であり、中長期的な目線で取り組む必要があります。