アセスメントとは?ビジネスにおける意味や人事領域での活用事例、取り組み方を解説

アセスメントは「評価」や「査定」を意味する言葉で、特に人事領域においては、「個人の能力や適性を客観的な基準や手法によって測定・評価し、採用や配置、育成などの意思決定に活用するプロセス」を指す。

このプロセスは単なる主観的判断ではなく、科学的な手法や体系的なアプローチを用いて、人材の潜在能力や将来性を含めた多角的な評価を行うことが特徴である。

本記事では、人事担当者が直面する「適材適所の実現」「人材のポテンシャル把握」「客観的な評価基準の構築」といった課題に対し、アセスメントを活用した具体的な解決策と押さえるべきポイントを解説していく。

アセスメントとは

アセスメント(assessment)とは、直訳で「評価」や「査定」を意味し、ビジネスにおいては「対象を客観的に評価し、その結果に基づいて戦略的な意思決定を行うプロセス」という意味で使用される。

人事領域でのアセスメントは、単なる業績評価や査定と異なり、以下の要素を含んだ包括的なプロセスである:

客観性: 主観や印象ではなく、定量的・定性的データに基づく
体系性: 複数の評価項目や評価手法を組み合わせて多角的に分析
再現性: 同じ条件で実施すれば同様の結果が得られる科学的アプローチ
予測性: 現在の状態だけでなく、将来のポテンシャルや適性も測定

近年は、上場企業に人的資本情報の開示が義務化されたことで、従業員の能力や特徴を定量的に評価し可視化できるアセスメントのニーズは年々高まっている。

大手研修会社インソースグループで、企業の人的資本経営を支援するインソースコンサルティング執行役員の帰山智幸氏は、アセスメントニーズの高まりについて次のように話している。

「社員のスキルを可視化して自社の人材要件に照らし合わせるためにアセスメントのニーズが伸びており、『一般的なアセスメントでは物足りないので自社に合うアセスメントを作りたい』という相談が増えています。こうした独自性を求める傾向は、人材要件、教育体系、評価制度の見直しなどの相談でも共通しています。人的資本情報の開示項目にも各社の個性が見られますが、自社の方向性や価値基準に沿って必要な人材を確保していきたいという意識が強くなっています」

人事領域におけるアセスメント

人事サイクルにおいて、採用から育成、配置、評価まで各フェーズで科学的手法が導入され、データに基づく意思決定を可能にしており、特に近年は、従来の属人的判断からの脱却と、客観性と一貫性を兼ね備えた仕組みづくりへの移行が顕著だ。

人事サイクルの各フェーズにおけるアセスメント手法と目的は以下の通りである。

フェーズ主なアセスメント手法活用目的
採用適性検査・認知能力テスト
ジョブシミュレーション
構造化面接
適性把握
組織適合性予測
早期離職リスク低減
配置・登用アセスメントセンター
360度評価
コンピテンシー評価
適材適所の実現
登用判断の客観化
多様性確保
育成・開発スキルアセスメント
リーダーシップ診断
学習スタイル分析
育成ギャップの特定
個別育成計画策定
効果測定
評価・処遇成果評価
行動評価
ポテンシャル評価
処遇の公平性確保
動機づけ
リテンション

アセスメントの手法と特徴

人事アセスメントには様々な手法があり、目的や対象者、予算によって最適な選択肢が異なる。以下に代表的な手法とその特徴をまとめる。

適性検査

適性検査は認知能力、性格特性、行動傾向を測定する基本的アセスメント手法である。標準化された質問形式を用い、大量データに基づく比較が可能で、実施・分析の効率性が高い。採用スクリーニングや適性把握、大量採用に適している。

アセスメントセンター

アセスメントセンターはリーダーシップ、対人能力、問題解決力を評価する手法である。複数の評価手法を組み合わせ、実務に近い状況での観察と複数評価者による判定を特徴とする。管理職登用やハイポテンシャル識別、リーダー育成に適している。

360度評価

360度評価は行動特性、対人関係、職場への影響力を多角的に測定する。上司・同僚・部下など多様な視点からの評価により、盲点の発見とフィードバックの具体性が特徴である。管理職育成、組織風土改善、自己認識促進に適している。

スキルアセスメント

スキルアセスメントは技術的スキル、業務知識、実務能力を測定する手法である。職種別の専門性測定やスキルギャップの把握に優れ、育成計画への活用が容易である。適材配置、育成計画策定、専門職評価に適している。

また、ITリテラシー、デジタル適応力、データ活用能力を評価するデジタルスキルアセスメントもあり、オンライン完結型でスキルレベル別診断と自動フィードバック機能を備える。

アセスメントで期待できる効果

日本人材ニュース

人事領域におけるアセスメントは、単なる能力測定の枠を超え、組織全体の人材戦略を支える基盤として機能する。長期的な視点で捉えると、適切に設計・実施されたアセスメントは次のような効果をもたらす。

採用精度の向上

採用のミスマッチは、早期離職や生産性低下といった大きなコストを企業にもたらす。適性検査や構造化面接などの科学的手法を導入することで、候補者と組織・職務とのマッチング精度が向上し、採用コストの効率化や早期離職の防止につながる。

阪急阪神百貨店、三菱UFJ信託銀行、ユニ・チャーム、東急などが利用するデジタル面接「HireVue」は面接の録画から行動特性をAIが評価する「AIアセスメント」を備えており、導入企業はAIアセスメント上位者を自動的に合格とし、残りの応募者を録画面接で確認する手法によって効率的な採用活動を実現させている。

適材適所の人材配置

アセスメントによって従業員の強みや特性を科学的に可視化することで、個人の能力を最大限に活かせるポジションへの配置を可能にし、変革人材の育成と配置の促進、組織変革のスピードアップに寄与する。

育成投資の最適化

人材育成は多くの企業にとって重要な投資領域だが、効果測定の難しさから「投資対効果の不透明さ」が課題となっている。アセスメントを通じて従業員個々のスキルギャップや成長ポテンシャルを特定することで、育成投資の優先順位づけが可能になる。

アセスメント導入時の注意点とポイント

アセスメント導入の効果を最大化するためには、計画段階から運用、評価に至るまで、いくつかの重要なポイントがある。以下に、人事部門が特に注意すべき事項をまとめた。

経営戦略・事業戦略との整合性確保

アセスメントは「測定のための測定」になりがちだが、最も重要なのは経営戦略や事業戦略、人財戦略との整合性である。どのような人材を、どのような目的で評価するのかを明確にし、経営層を含めたステークホルダーの合意形成を図ることが重要である。

持続的な企業成長に向けて次世代リーダーの選抜と育成に関するニーズは年々高まっており、経営人材の後継者を選抜する「Leader3 Ready」、次世代リーダーの素養を見極める「Leadership Snapshot」をはじめ多様なアセスメントサービスを提供するマネジメントサービスセンターにも多くの相談が寄せられているという。

同社取締役の福田俊夫氏は、「人事部が高く評価している社員が実際のビジネスにおいて結果を出せないというケースが出ています。デジタル化などで事業環境は大きく変化していますので、コンピテンシーやトレーニング内容を事業戦略に合わせて見直していくことが必要です」と話す。

複数手法の組み合わせ

単一のアセスメント手法では、評価の偏りが生じる可能性がある。複数の手法を組み合わせることで、多角的な視点から対象者を評価し、より精度の高い人材判断が可能になる。

データ活用と継続的改善

アセスメント結果は、単発の判断材料ではなく、継続的に蓄積・分析することで価値が高まる。アセスメントデータを人材データベースと連携させ、長期的な傾向分析や予測モデルの精度向上に活用することが重要である。

アセスメントデータを長期にわたって継続的に活用している企業は、導入初期の企業と比較して、採用や人材配置の成功率が高い傾向にある。

アセスメントの導入時に使えるチェックリスト

アセスメント導入を検討している人事担当者向けに、準備から実施、評価に至るまでのチェックリストをまとめた。

準備段階
□ 経営層・事業部門との目的共有ができているか
□ 評価対象と評価基準が明確になっているか
□ 複数の評価手法を組み合わせた設計になっているか
□ 評価者トレーニングの計画があるか
□ 結果のフィードバック方法が確立されているか
□ 評価結果の活用計画(配置・育成など)が具体化されているか
□ 成果測定のKPIが明確になっているか
実施段階
□ 対象者への事前説明は十分か
□ データの管理・セキュリティ体制は整っているか
□ 緊急時・例外対応の手順は明確か
□ 評価の公平性・一貫性は担保されているか
□ 対象者のプライバシーへの配慮はなされているか
活用・改善段階
□ 結果を個人の成長に結びつける仕組みはあるか
□ データの蓄積・分析体制は整っているか
□ 定期的な精度検証・改善の計画はあるか
□ 組織全体への効果測定の方法は確立されているか
□ アセスメント結果と実際のパフォーマンスの相関は検証されているか

アセスメントを活用し、社員が活躍できる土台づくりを

アセスメントはあくまでも客観的な評価を行うためのプロセスであり、その結果をどう活用するかは人事担当者の手腕にかかっている。活用できれば社員の活躍を促しモチベーションを高め、会社全体の生産性を向上させることが可能である。

重要なのは、アセスメントを単なる選別ツールではなく、個人と組織の成長を促進する「架け橋」として位置づけることである。評価した結果から強みや課題を把握し、対象者本人にもよく説明し納得してもらった上で、具体的な成長アクションにつなげていくべきである。

日本人材ニュースでは、人事関係者から推薦を受けて選定した、優れたアセスメントを提供する会社やサービスを紹介している。

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