【2026年春闘】賃上げ率3年連続5%台、大手・中小の規模間格差は縮小も中小に残る課題

2026年春闘の平均賃上げ率は3年連続で5%台となった。一方で中小・小規模企業や地方には賃金格差が残る。その実態を各種調査から読み解く。(文:日本人材ニュース編集委員 溝上憲文、編集:日本人材ニュース編集部

賃上げ率3年連続5%台、大手と中小では依然として格差

労働組合の中央組織の連合は7月3日、2026年春闘の最終回答集計結果を公表した。それによると、5,368組合の加重平均(規模計)の賃上げ額は1万6,400円、賃上げ率は5.01%となった。昨年を0.24ポイント下回ったものの、金額で44円増となった。

長らく停滞していた賃上げは2024年の5.10%となって以来25年の5.25%に引き続き3年連続で5%台を達成した。3年連続で5%を上回ったのは1991年以来35年ぶりとなる。

一方、日本の企業の7割を占める中小企業の動向も重要だ。
300人未満の中小組合(3,831組合)の賃上げ額は1万2,866円となり、賃上げ率は昨年を0.04ポイント上回る4.69%となった。

内訳は100~299人の組合が4.83%(1万3,505円)、99人以下が4.26%(1万1,124円)。1000人以上の賃上げ率が5.06%(1万7,359円)であるのに対し、99人以下とは額にして6,235円、率にして0.8ポイントの格差が開いている。
2025年の1.03ポイントの格差より縮小したものの依然として格差は大きい。

ベースアップ分3.50%、中小が全体を上回る

5.01%には定期昇給分も含まれる。基本給を底上げするベースアップ分は1万1,510円、率は3.50%と、昨年を0.24ポイント下回った。

企業規模では300人以上も同率の3.50%。内訳は300~999人が3.65%(1万1,081円)、1000人以上が3.46%(1万1,866円)となっている。

一方、300人未満は3.51%(9,840円)と全体を上回った。内訳は100~299人が3.59%(1万169円)、99人以下が3.23%(8,700円)となっている。100~299人の企業と300~999人の中堅企業が健闘していることがわかる。

連合は5%以上の賃上げ目標を掲げるとともに、規模間格差を解消するために中小組合は6%以上という目標を掲げていた。6%に届かなかったが、大手と中小の格差が若干であるが縮まった。

連合は2026年5月28日の第97回中央執行委員会の「2026春季生活闘争中間まとめ」で「企業規模間の賃上げ格差拡大に歯止めがかかる兆しがある」としつつ、「価格転嫁・適正取引の進捗度の違いや産業・企業の業況によって、産業間の差や同一産業内での企業間の差が出ている。構成組織の調査によると、価格転嫁の有無で賃上げに1,500円程度の差が生じている」としている。賃上げ原資を確保するための価格転嫁が進んでいない企業と明暗が分かれる。

労組の有無で賃上げ率に差

実は連合の賃上げ率も中小企業の実態を必ずしも表しているとはいえない。一般的に労働組合のある企業はない企業よりも賃上げ率が高い傾向にある。

労働組合のない企業が多数加盟する日本商工会議所と東京商工会議所は6月8日、「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」の集計結果を公表した。同調査は全国の商工会議所会員企業2,260社対象に調査したものだ。

同調査によると、2026年の正社員の賃上げ額(月給)は加重平均で1万1,366円、賃上げ率は4.01%。前年比0.02ポイント減となっており、連合の中小組合の平均4.69%よりも低い。また、20人以下の小規模企業は、加重平均で9,170円、3.38%となり、前年比0.16ポイント減となっている。

賃上げ額・率を都市部(東京23区・政令指定都市)と地方(東京23区・政令指定都市以外)で見た場合、都市部の正社員の賃上げ額は加重平均で1万2,671円、賃上げ率は4.08%、地方は1万1,148円、賃上げ率3.99%。地方の小規模企業の場合は、9,262円、賃上げ率3.45%と、さらに低くなっている。

物価に追いつかない賃上げ、二極化と現場の疲れ

2026年1月から物価が2%弱に落ち着いたこともあり、日本全体の実質賃金はプラス傾向にある。

一般的に定昇がある企業は2%程度といわれる。そうであれば4%強の賃上げ率でなければ物価上昇率を上回り、実質賃金がプラスになることはない。

小規模企業の賃上げ率が4%以下では、従業員は物価を下回る賃金しか得られていないことになる。さらに今後の食料品などの相次ぐ値上げで物価はさらに上昇すると見込まれている。26年の賃上げも再び実質賃金のマイナスに陥る可能性もある。

賃上げ率のレンジ集計結果によると、6%以上が16.4%、5%以上6%未満が9.6%となり、5%以上の賃上げが全体で計25.9%(昨年比4.4ポイント減)。それに対し2%未満の企業が20.7%とほぼ拮抗している。都市部では6%以上が14.6%、5%以上の賃上げ企業は28.0%、2%未満が19.5%だった。

一方、地方の企業では6%以上が16.6%と都市部を上回り、5%以上が25.6%となっている。地方・小規模企業では6%以上が12.9%、5%以上が21.4%となっているが、2%未満の企業は26.7%と4分の1を占めるなど賃上げ率の二極化の傾向が続いている。

同調査の自由回答では、「材料費や燃料費の高騰が続く中、価格転嫁が難しく、賃上げ原資に苦慮。中小事業者でも活用しやすい支援制度や、手続きの簡素化を期待」(中部・建設業)という声も挙がっている。いわゆる“賃上げ疲れ”の傾向も見てとれる。

最低賃金の議論始まる、価格転嫁が今後のカギ

賃上げに関しては、2026年度の最低賃金をどうするかについて中央最低賃金審議会での議論が始まっている。パート・アルバイトに限らず最低賃金の影響を受ける中小企業の従業員も少なくない。

中小企業が物価を上回る賃金を確保するには、労務費などの価格転嫁が可能な取引環境のさらなる整備も求められる。


溝上憲文 人事ジャーナリスト

溝上憲文

人事ジャーナリスト/1958年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、新聞、ビジネス誌、人事専門誌などで経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。主な著書に「隣りの成果主義」(光文社)、「団塊難民」(廣済堂出版)、「『いらない社員』はこう決まる」(光文社)、「日本人事」(労務行政、取材・文)、「非情の常時リストラ」(文藝春秋)、「マタニティハラスメント」(宝島社)、「辞めたくても、辞められない!」(廣済堂出版)。近著に、「人事評価の裏ルール」(プレジデント社)。
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人事ジャーナリスト/1958年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、新聞、ビジネス誌、人事専門誌などで経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。主な著書に「隣りの成果主義」(光文社)、「団塊難民」(廣済堂出版)、「『いらない社員』はこう決まる」(光文社)、「日本人事」(労務行政、取材・文)、「非情の常時リストラ」(文藝春秋)、「マタニティハラスメント」(宝島社)、「辞めたくても、辞められない!」(廣済堂出版)。近著に、「人事評価の裏ルール」(プレジデント社)。

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