ファーストキャリアのカジュアル化、26年卒新入社員の実像と定着戦略

2026年卒の新入社員が入社して約2カ月。26年卒には就活行動やキャリア観において従来世代と異なる特徴が見られる。(文:日本人材ニュース編集委員 溝上憲文、編集:日本人材ニュース編集部

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就活の「カジュアル化」、エントリー減少と1社内定の時代

新入社員がこの春入社して約2カ月が経過した。毎年、早期離職が懸念される時期でもあるが、2026年度入社の新人は例年とは異なるある特徴を帯びている。特徴の一端は2026年卒の学生の就活からもうかがえる。

マイナビの「2026年卒大学生キャリア意向調査6月<就職活動・進路決定>」によると、26年卒の2025年2月までの平均エントリー社数は6.4社。22年卒以降増加傾向にあり、25年卒は10.9社だったが、減少に転じた。

また、25年卒は3月以降のエントリー数は3月7.4社、4月1.9社、5月0.9社と漸減していたのに対し、26年卒は3月7.3社、4月5.0社、5月5.4社、6月4.4社と3月以降もエントリーする人が増えている。

例年なら大学3年生になった2024年の夏あたりからインターンシップに参加し、秋・冬にかけてエントリーする人が多いが、26年卒の出足は遅い。

また、マイナビの「2026年卒内定者意識調査」によると、保有内々定社数は1.73社と前年より0.55ポイント減少し、内々定数1社の割合は62.2%と前年より21.2ポイントも増加している。就活時期が完全に分散し、かつ売り手市場であっても内定数は1社が多い。

文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「ファーストキャリアのカジュアル化と呼んでいる。買い物の感覚と同じように1社内定取って条件がある程度良ければ決めてしまう。オープンカンパニーなどに参加し、接触した企業からアプローチがあると受けて、2社内定が取れたら条件が良いほうに決めてしまう。非常にカジュアルであり、ファーストキャリアの意志決定プロセスが26年卒から明確に変わった」と語る。

情報収集の変容、SNS依存と「身体を使わない」就活

従来の就活は早期からインターンシップに参加し、会社訪問やOB・OG訪問などを通じて自分の体と耳で情報収集する。そして、できるだけ多くの内定を得た上で最終的に納得のいく会社を選ぶというイメージだった。

新入社員研修を手がけるALL DIFFERENT事業開発推進本部シニアマネジャー・開発室室長CLM(最高育成責任者)の根本博之氏も「これまでは10~20社を受ける学生もいたが、例えば1~3月は5社を受けて他の会社にエントリーしない。5社の中でよさそうな会社があれば決めてしまう。ファーストキャリアにおける選択が良くも悪くも軽くなっていると感じる」と言う。

実際に、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所「新卒採用戦線総括2026」の入社の意志決定時に参考にした情報では「転職サイトの口コミ」「企業HP」「実際に働いている社員、OB・OGの話」など、ほぼすべての項目で25年卒より割合が低下している。唯一増加に転じたのは「特に何も見ずに決めた」(3.0→6.6%)だった。

平野所長は「就活の情報収集がSNSなどのネット情報に偏り、身体を使っていろんな人に会って自分のキャリア観をつくる学生が少なくなっているように感じる。そもそも仕事に対する熱量がそんなに高くない。今はまだやりたい仕事がはっきりしているわけでもないし、かといって転職を前提にしているわけでもない。自分の生活が一定レベル以上保てる企業であればいいんじゃないか程度の感覚であり、仕事の内容やキャリアについての優先順位が下がっているようだ」と語る。

入社後のキャリア観 「まだはっきりしていない」が45%

入社後のキャリア観も不明確な人も多いのが特徴だ。ALL DIFFERENTラーニングイノベーション研究所の「入社直前意識調査・これからの成長・キャリア編」(2026年4月21日)によると、「会社で担いたい役割」については「スペシャリストとして専門領域を極めたい(専門職)」と回答した割合は27.1%。「マネジメントを行いチームを統率したい(管理職)」が18.0%だが、「まだはっきりしておらず、今後決めていきたい」が45.5%と最も多くなっている。

若者の専門職志向を踏まえ、職種別・ジョブ型採用の企業が増えているが、少なくとも26年卒の新入社員は必ずしも専門職志向が強いとはいえない。平野所長は26年卒の特徴としてコロナ禍の経験も影響を与えていると言う。

「思春期の高校時代に黙食をさせられ、人との距離を取りなさいと言われ、上の世代以上に受け身であることが肯定されてきた。そのため必要なことは指示されるはずであり、それ以上のことをしてはいけないという感覚を持っている。一方、SNSなどのネットの繋がりは深いが、対面での接触など距離感には敏感だ」

26年卒の特徴は「受け身・低熱量・距離感」

以上を踏まえ26年入社の新入社員の特徴をあえて整理すると、
①就活時期に見られるようにキャリア獲得に熱心な人がいる一方で表面的な情報で入社を決めるなど会社・仕事に対する熱量が低い人も少なくない
②受け身の姿勢が顕著で主体性に乏しい
③目指すキャリア像が定まっていない
④他者との距離感に敏感で、自ら率先して行動することを避ける傾向がある
といったところだろうか。

距離感に関してはメンタルパフォーマンス(メンパ)重視の傾向もあるという。ストレスが発生しない心の平穏を意味するが、「自分にとっても心地の良い距離感を大事にする若者が多く、人の対話にも慎重であり、特に新入社員は組織内の濃密な人間関係に触れると、メンパを気にしてこれ以上は無理と思ってしまう可能性もある」(平野所長)と言う。

定着のカギは相互理解と「成長実感」「尊重」の二本柱

こうした特徴を持つ新人に待ち受けているのがリアリティショック(予想と現実のギャップによるモチベーションの低下)だ。ショックが大きければ離職の引き金にもなりかねない。

ALL DIFFERENTの根本氏は「スペシャリスト、あるいはマネジメントなど、自分のキャリア像を決めている人は就活中に情報収集や企業研究を行い、入社後のイメージが明確になった状態で入るためにリアリティショックは比較的少ない傾向がある。一方、キャリア像がはっきりしていない人は情報の幅が広く、焦点が定まっていないために、入社後に”こんなはずではなかった”と思うことが出やすい傾向もある」と指摘する。

リアリティショックを和らげ、定着していくために平野所長は職場のメンバーとの相互理解も不可欠だと言う。

「育成担当者と関係が密になっても、他のメンバーとは意図的に交流できる時間を取らない限り、距離感は縮まらない。相互理解が進む場を設けて『この人はこれが得意でこういう問題が発生したらいろいろ答えてくれる』という情報があれば、困ったときに相談できる。いろんな人と顔見知りになれば定着しやすいのではないか。唯一の命綱が上司や直属の指導役だけではなく、メンバー全員と面で理解し合うことが大事だ」と語る。

企業によっては交流のための雑談タイムを設けるところもあるが、「雑談は今の新人にはハードルが高く、大人との自然発生的な雑談を一番苦しいと感じる。ちゃんとコミュニケーションプランやテーマを設定して交流する必要がある」(平野所長)。もちろん、“とりあえず皆で飲みに行こう”は厳禁だ。

根本氏は定着する要素として2つあると言う。「1つがこの会社にいてしっかりと成長できるなという感覚が持てるかどうか、もう1つが自分は尊重されていると感じられるか。例えば上司に提案しても何一つ通らない、考えておくよと言われても何も変わらないと、自分はいてもよいのか悩んでしまう。上司としては初手が勝負だと思う。新人から提言されたら意地でも叶えてあげようという姿勢が大事だ」と語る。

退職の意思を固めた人を引き留めるのはもはや難しい時代であるが、その前に会社や職場でできることもあるだろう。


溝上憲文 人事ジャーナリスト

溝上憲文

人事ジャーナリスト/1958年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、新聞、ビジネス誌、人事専門誌などで経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。主な著書に「隣りの成果主義」(光文社)、「団塊難民」(廣済堂出版)、「『いらない社員』はこう決まる」(光文社)、「日本人事」(労務行政、取材・文)、「非情の常時リストラ」(文藝春秋)、「マタニティハラスメント」(宝島社)、「辞めたくても、辞められない!」(廣済堂出版)。近著に、「人事評価の裏ルール」(プレジデント社)。
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人事ジャーナリスト/1958年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、新聞、ビジネス誌、人事専門誌などで経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。主な著書に「隣りの成果主義」(光文社)、「団塊難民」(廣済堂出版)、「『いらない社員』はこう決まる」(光文社)、「日本人事」(労務行政、取材・文)、「非情の常時リストラ」(文藝春秋)、「マタニティハラスメント」(宝島社)、「辞めたくても、辞められない!」(廣済堂出版)。近著に、「人事評価の裏ルール」(プレジデント社)。

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