偶発的

偶発的とは思いがけず起きることを意味する言葉で、古くは大正5年(1916年)に連載された夏目漱石の長編小説『明暗』の「偶発的に起ったこの瞬間の覚醒は無論長く続かなかった」という一節で用いられています。人事用語としては1999年にスタンフォード大学教授で心理学者のジョン・D・クランボルツ氏が提唱した、偶発的な事をキャリア形成に役立てるという「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)が有名です。また日本では近年になって「偶発的コミュニケーション」という言葉に用いられています。

「計画された偶発性理論」は計画的偶発性理論とも呼ばれ、クランボルツ教授が調査したところビジネスで成功を収めた人のおよそ8割が「成功の要因は予期せぬ偶然によるもの」と回答したことに基づくキャリア形成理論です。成功者は常に努力を怠らず最善を尽くすよう日々を過ごしていたことから、偶発的な出来事によって重要なターニングポイントを迎えた際にチャンスを掴むことができたという理論を導き出しました。クランボルツ氏は「好奇心」、「持続性」、「柔軟性」、「楽観的な気持ち」、「変化を怖れぬ冒険心」といったプラス思考の特性を持てば偶発的なチャンスを掴みやすいというのです。

終身雇用が崩れて転職によるキャリアップが当然の時代となり、さまざまなキャリア形成理論が語られています。自己分析によって自分の“核”となるものを見つける「キャリアアンカー理論」に対して、情勢が急速に変化する時代だけに従来のキャリアプランにこだわりすぎると、チャンスを逃してしまう可能性があるという不安から計画的偶発性理論が注目されています。

また日本では社内における社員同士のコミュニケーションが課題となるなか、10年ほど前から「偶発的コミュニケーション」という言葉が使われるようになりました。特に新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークというスタイルを余儀なくされ、偶発的コミュニケーションの機会がさらに減ってしまいました。その後はウィズコロナの時代を迎えてオフィスとテレワークを使い分ける“ハイブリッド”な働き方が定着しつつあり、いかにして偶発的コミュニケーションを作るかが課題となっています。

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