専門家に聞く「経営幹部の採用・選抜・育成の課題」

活用できることをイメージした研修内容を求める傾向が強まる

プレセナ・ストラテジック・パートナーズ

プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
岡安 建司 代表取締役 CMO

経営幹部をどのような段階を踏んで育てていくのかを意識して人材戦略を考える企業が増えている。若手の時期から目的意識を持たせてベースとなる知識をしっかりとインプットさせ、意欲と能力が高い人材をより早く引き上げようとしている。

研修では一段高いレベルを示し、インプットした知識を活かして事業課題に対するアウトプットを求めるようなアクションラーニングが積極的に活用されている。

リーマン・ショック以降、人材への投資は年々増加してきているが、研修の費用対効果に対する要求は厳しい。実際に活用できることをイメージした研修内容を求める傾向が強まっており、当社に与えられるテーマも難しくなっている。また、グローバル人材育成の体系化やアセスメントなどのニーズも高まっている。

ビジネスモデルを構築し実践できる“成長戦略人材”が必要

カタナ・パフォーマンス・コンサルティング

カタナ・パフォーマンス・コンサルティング
宮川 雅明 代表取締役

企業が必要としているのは、ビジネスモデルを構築し実践できる“成長戦略人材”だが、失われた20年によって今の経営幹部候補の多くが成長戦略を経験していない。そのため、先進的な企業の育成プログラムでは、成長市場の新興国に行って事業化を体験させるといった取り組みが見られる。

成長戦略人材が育つような環境を持つことが企業の競争力につながるが、根本的な問題として、多くの企業の社員は自社の戦略にあまり興味を持っていないように見える。企業は現場の社員が何を考えているのかを良く理解してコミュニケーションを高める必要があるだろう。

研修は人材を知るという貴重な機会でもあるが、人事がほとんど顔を出さない企業もある。社内にどのような人材がいるのかをよく知らない人事が増えていないだろうか。

価値観の違いを埋められるコミュニケーション力が欠かせない

オジャーズベルンソン

オジャーズベルンソン
ヨハン・アウテンボーハールド マネージングディレクター

当社は日本で1991年からリテインド・サーチで経営幹部の獲得を支援しているが、アベノミクスによって日本に期待する外資系企業からの依頼が増加した。IT、消費財、金融分野などで新たに日本に進出してくる企業も多くなっている。中国経済が不振で日本のヘッドカウントを増やしている企業もある。

外資系企業の日本法人の経営幹部には、日本市場に対する深い理解に加えて、事業を成長させるために必要な投資を本社から引き出す能力が必要になるため、語学力はもちろんのこと、価値観の違いを埋めることができるコミュニケーション力や交渉力が欠かせない。

さらに最近見られる傾向として、本社から日本法人のガバナンスが弱いという見方がされており、業績報告や組織マネジメントのスキルに優れた人材が求められている。

会社規模が大きいほど慎重な人選が必要

KANAEアソシエイツ

KANAEアソシエイツ
阪部 哲也 代表取締役

外資系企業の経営幹部求人が急増している。アジア市場を建設的に見ているため、日本の人員を増やして組織強化を図っている。

国内企業では海外販路を拡大するためのM&Aや資金調達のスキルを持つ人材がいない場合、まずはスペシャリストとして採用し実績を見極めた後に幹部に登用するケースもある。経営幹部の中途入社は、社員にインパクトを与え、時には現場と馴染めず退職することも少なくないため、会社規模が大きいほど慎重な人選が必要だ。

年収水準の高さを理由に採用を諦めている企業も見られるが、経営幹部の素養を持つ人材の多くは年収よりも仕事のやりがいを優先する。当社はスピードとリファレンスチェックを徹底し、求人企業が経営幹部に求める結果を明確にした上での紹介を心がけている。

中長期的なビジョンで取り組まないと解決できない課題が多い

コア

コア
秋元 利浩 代表取締役社長

外資系企業の経営幹部の採用課題は、経営幹部が2 〜3年という短期の契約で事業実績を求められることが多いため、部下に対する達成目標にも無理が生じ、結果として実績を上げることが困難になる場合が見受けられることだ。

そのような企業では、数年ごとに経営者や責任者が総入れ替えするなど採用の悪循環が続いてしまう。日本のマーケットでは地道な活動が必要なため、中長期的なビジョンを持って取り組まないと解決できない課題が多い。

また、経営幹部候補となるマネジャークラスの採用・育成・評価では、経営トップとの十分なすり合わせを行い、さらに役員を巻き込んで対応することが必要だ。その上でマネジャークラスの採用ではテクニカルスキルだけではなく、ヒューマンスキルという人間力をみる必要がある。

その他の人材採用や人事関連の記事はこちら

【あわせて読みたい】

1 2 3

4

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
MONTHLY

ピックアップ

PAGE TOP