グローバル人材の採用支援を行うキャリタスの企業調査によると、2025年度に外国人留学生の採用を見込んでいる企業が大幅に増加していることが分かった。特に、日本人では確保できない専門分野の人材を補うために理系学生の獲得を目指す企業も出てきている。
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キャリタスが全国の主要企業2万2404社を対象に、日本の大学または大学院に留学する外国人留学生の採用実態、海外大卒外国人材(新卒・中途問わず)の採用や活用、課題等について実施した調査によると、2024年度に外国人留学生を採用した企業は25.6%で、前年調査から3.8ポイント増加した。
2025年度に採用を見込んでいる企業は38.0%で、2024年実績に比べて12.4ポイントも多い。製造業は39.6%、非製造業は36.7%で、業種を問わず採用が広がっているようだ。
外国人留学生を採用する目的は、「優秀な人材を確保するため」が文系で72.6%、理系で78.9%でともに最多。理系は「日本人では確保できない専門分野の人材を補うため」が文系に比べて高い(文系 8.8%、理系22.9%)。
2024年度に外国人留学生を採用した企業の採用人数の平均は 3.25人。「文系(学部卒)」(62.7%)の採用が最も多いが、「理系」は学部卒(34.7%)、修士課程修了(22.7%)、博士課程修了(4.0%)を合計すると6割を超える。
外国人留学生の採用に詳しいマイナビの鷲﨑信広グローバルキャリア支援部長(当時)は、弊誌の新卒採用特集記事(2024年5月)に「既に全世界中で人材獲得合戦が激化していることも頭に入れておくべきでしょう。今後は国・企業が外国人留学生を受け入れるという姿勢ではなく、いかに外国人留学生に選ばれる国・企業になりうるかという姿勢や発想が必要となります」とコメントを寄せ、人材獲得競争の激しさを伝えている。
外国人留学生が就いた職種は、製造業は「研究・開発・設計関連」(25.8%)、「建築・土木設計関連」(22.6%)、「事務・管理関連」(19.4%)が多い。非製造業は「IT・ソフトウエア関連」(44.7%)が4割を超え、「国内営業関連」(17.0%)、「専門・スペシャリスト職」(12.8%)、「流通サービス・販売関連」(12.8%)が続いた。
外国人留学生が就いた職種
製造業 | 非製造業 |
研究・開発・設計関連(25.8%) | IT・ソフトウエア関連(44.7%) |
建築・土木設計関連(22.6%) | 国内営業関連(17.0%) |
事務・管理関連(19.4%) | 専門・スペシャリスト関連(12.8%) 流通サービス・販売関連(12.8%) |
国内営業関連(16.1%) 海外営業関連(16.1%) | 事務・管理関連(10.6%) |
生産・製造・品質管理関連(12.9%) | 企画・マーケティング関連(8.5%) クリエイティブ関連(8.5%) |
企画・マーケティング関連(6.5%) IT・ソフトウエア関連(6.5%) 専門・スペシャリスト関連(6.5%) その他(6.5%) |
外国人留学生の出身国(地域)は「中国」(59.0%)、「ベトナム」(23.1%)、「韓国」(21.8%)が多かった。今後採用したい出身国(地域)は「中国」(49.3%)、「韓国」(26.0%)、「台湾」(24.7%)が上位だが、東南アジア出身の学生も対象にしていく企業も増えそうだ。
外国人留学生の出身国(東南アジア)
国名 | 2024年度実績 | 今後採用したい |
ベトナム | 23.1% | 23.5% |
インドネシア | 6.4% | 13.6% |
ミャンマー | 5.1% | 6.8% |
フィリピン | 2.6% | 6.1% |
タイ | 1.3% | 8.3% |
マレーシア | 1.3% | 6.1% |
シンガポール | 0.0% | 3.0% |
カンボジア | 0.0% | 1.5% |
企業を悩ませているのが入社後の定着だが、外国人留学生の入社3年後の離職率を聞いたところ、「日本人新卒社員と比べて低い」(15.5%)と回答した企業が、「日本人新卒社員と比べて高い」(13.8%)と回答した企業を上回った。
外国人留学生を採用したことによる自社への好影響は「異文化・多様性への理解の向上」(57.8%)。「グローバル化推進への理解、意識醸成」(56.3%)、「日本人社員への刺激・社内活性化」(53.1%)が5割を超えた。
東証プライム上場企業で総合保証サービスを提供するイントラストは優秀な外国人材の採用に成功し、採用活動を主導した債権管理部長の藤森武氏は「彼らのいち早く仕事を覚えて戦力になろうと貪欲に学ぶ姿勢は、日本人社員にとって非常に良い刺激になっています。彼らを採用したことによって、私たちは新たな学びの機会を得ることができ、同じ仕事をする仲間として助け合う風土がこれまで以上に醸成できてきているのではないかと感じています」と話す。
外国人留学生のみならず、多様な人材を受け入れて持続的な企業成長を目指す企業が出てきている。人材不足が慢性化する中、人材を確保していくためにはこれまでの人事・採用の見直しが必要になっている。
外国人留学生/高度外国人材の採用に関する調査(2024年12月調査)の詳細はこちら
https://www.career-tasu.co.jp/press_release/11582/
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