
佐野創太
【PROFILE】1988年生。慶應義塾大学法学部政治学科卒。大手転職エージェント会社で求人サービスの新規事業の責任者として事業を推進し、業界3位の規模に育てる。 介護離職を機に2017年に「退職学®︎」の研究家として独立。 1400人以上のキャリア相談を実施すると同時に、選手層の厚い組織になる”リザイン・マネジメント(Resign Management)”を50社以上に提供。 経営者・リーダー向けの”生成AI家庭教師”として、全社員と進める「ゼロストレスAI術」を提供する他、言葉を大切にするミュージシャン専門のインタビュアーAIを開発している。著書に『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!』(サンマーク出版)、『ゼロストレス転職』(PHP研究所)、『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)、『70%で働く』(日経BP)がある。
『70%で働く』(日経BP)なんてタイトルを見ると「社員に無理をさせないための本」と思われるかもしれません。実際に知り合いの経営者には「またそうやって甘やかすような本を書いたな」と叱られました。しかし、本書に綺麗事は一行もありません。ワークライフバランスの焼き増しでもありません。
確かに本書は短期的な「記録」だけを追いかけたい会社にとっては不要です。むしろ邪魔になるでしょう。短期的な記録に加え「この会社では働きがいを感じられる」「あの会社のようにしたい」と人の「記憶」にも残ることを志向する会社だけの本です。
私はこれまで1500人以上のキャリア相談をしてきましたが、働く人だけの肩を持つつもりはありません。実際に私自身もAI活用の推進、新規事業、オウンドメディア、採用広報の立ち上げなど、関係者のすり合わせを超えて鍔迫り合いが起きるような、120%の力を出す領域の仕事をしています。
釈迦に説法ですが、仕事には勝負するときがあります。短期間で一気に成果を出さなければならない場面があります。そこに反論の余地はないはずです。
ただ、経営者や人事の皆さんなら「勝負する」とは「いつでも全てに全力でいること」ではないと同意いただけるのではないでしょうか。長く成果を出し続ける要諦は、いつ勝負するかを見極めることです。30年以上経営を続ける大先輩から、私も直接教わったことです。いつでも100%で働いていたら、本当に120%の力が必要な勝負どころですでに余力がありません。
たとえばアイリスオーヤマは平時から工場を7割程度の稼働に抑えることで、コロナ禍の急激なマスク需要にも対応しました。残りの3割はムダではありません。変化や勝負に対応するための余白です。
設備に余力を持たせる。資金に余裕を持たせる。経営者自身も予定を100%埋め尽くせば、次の一手を考える時間がなくなる。余力を活用する考え方は自然と浸透しています。
しかし、なぜか人だけは「常に100%で稼働させることが善である」という価値観が放置されています。ここにメスを入れるきっかけとして、本書を叩き台にするのはいかがでしょうか。
日本人材ニュースの連載でも、私はエース社員の「燃え尽き退職」や仕事を足し続けるマネジメントの危うさを書いてきました。優秀で責任感の強い人ほど「もっと成果を」「もっと成長を」という期待に応え続けます。その結果、会社が本当に力を借りたいときには余力を失っている。これは本人だけでなく会社にとっても大きな損失です。
70%とは手抜きではありません。勝負するための余力です。本書を「社員に手の抜き方を教える甘えの本」ではなく「勝負どころで120%を出せる組織をつくる本」として、ご笑覧いただけますと幸いです。貴社の価値観と『70%で働く』の価値観がすり合わさった時、記録にも記憶にも残る会社が出来上がるはずです。

佐野創太 著
日経BP
1,700円+税












