【マンパワーグループ】アウトソーシング事業が売上構成比20%超に成長

改正派遣法の施行もあり、人材派遣業界は年々縮小傾向にある。大手人材派遣会社の業績は横ばいだが、各社厳しい経営が続く。そこで、大手人材派遣会社マンパワーグループの池田匡弥副社長に今後の成長戦略を聞いた。

マンパワーグループ

マンパワーグループ
池田 匡弥 取締役代表執行役副社長

1989年慶應義塾大学経済学部卒業。サントリーを経て、1997年マンパワー・ジャパン(現マンパワーグループ)入社。99年銀座支店支店長、2001年首都圏東統括部統括部長。米マンパワーグループで2年間の研修を受講後、05年東日本地域本部営業本部長、07年執行役員営業本部長、08年執行役員副社長、12年取締役代表執行役副社長に就任。日本人材派遣協会理事(派遣労働者支援部会部会長)、人材サービス産業協議会キャリア形成支援プロジェクトサブリーダー

日本国内における人材派遣の現状は?

2008年にはリーマン・ショック、11年3月に東日本大震災があり、そして改正労働者派遣法が10月から施行されます。また、派遣法の改正以前から派遣事業の適正化で行政指導がありました。ここ数年、外的な要因によってマーケット全体を大きく揺るがすようなさまざまな事態がありましたが、全体としてはようやく落ち着きを取り戻しつつある状況です。ただ、リーマン・ショック前のように派遣業界が毎年大きな成長を遂げるというような状況にはありません。

人材業界全体のマーケットがリーマン・ショックで落ち込んだ反動もあり、各社ともようやく下げ止まりとなったところですが、派遣に関して言えば、かなり成熟化したマーケットと言えるでしょう。当社の過去3年の売上推移は、09年964億円、10年931億円、11年937億円で、セグメント別にみていくと派遣事業の成長は低下しましたが、一方でアウトソーシング、人材紹介、採用代行は成長事業となっています。特にアウトソーシングは人材派遣各社が今後成長を見込む事業分野です。

アウトソーシング自体はまったく新しい事業分野という訳ではなく、これまでも組織内のサービスレベルや業務効率を改善できる専門性の高い事業として、テレマーケティング系や業務系に強い専業会社がありました。最近はそれらに加え、派遣事業の適正化の結果として、事務系でも新たにアウトソーシングが拡大し始めています。

人材派遣業の成長は各社とも横ばい傾向ですが、今後の成長戦略は?

今後の成長戦略では、ワンストップソリューションを掲げ、あらゆる企業のニーズに対してサービスを提供できる体制が求められているため、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)、採用代行、再就職支援等の各事業を強化し、ここに海外ネットワークを結びつけた事業構築を考えています。

当社はグローバルに展開する外資系企業ですので、この利点を活かして海外拠点のネットワークを使って国内だけでなくグローバルなクライアントのためのサポートを国単位で提供していきます。アジア・パシフィックのハブはシンガポールにあり、地域14カ国を統括しています。

成長著しいタイ、ベトナムをはじめとして主要国に日本デスクを設けており、日本語ができるスタッフが常駐し日系企業とのコミュニケーションが円滑にいくようにしています。このようなグローバルネットワークをフルに活用することで、海外の人材を日本に導く、逆に日本の人材を海外に導くといったことが可能になります。

会社名についても、11年12月、一地域に対するサービス提供を連想させる「マンパワー・ジャパン株式会社」から「マンパワーグループ株式会社」に変え、同時にマンパワーグループソリューション、エクスペリス、マンパワー、ライトマネジメントの4つサービスブランドで専門性の高いサービスを提供していく計画です。

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アウトソーシング事業は成長しているのですか。

最近の傾向ですが、外国人ITエンジニアが日本で就業し、技術系チームに入り、クライアント先で活躍してもらうケースが増えています。日本の雇用が失われるのではないかと心配される人もいますが、不足する人材を海外から調達できなければ仕事そのものがオフショアで海外に行ってしまうことも考えられます。

日本で不足する人材は、海外から日本に来て働いてもらうことで、日本人の雇用を守り、かつ海外に出て行くことなく活躍することができるのです。また、外国人と一緒に仕事をすることで、日常は英語でコミュニケーションを図るなどの刺激を受けます。優秀な外国人を海外から招くことで日本においてグローバルな環境を積極的に作っていくべきだと思っています。

外国人を採用して気付くことは、技術レベルの高い人材はどこに行っても普遍性が高いということです。アジアの人材では、インド人やフィリピン人も多く活躍するようになりましたが、採用時には、現地で日本語教育を3カ月から6カ月間徹底して行うため、仕事上のコミュニケーションは日本語でも可能です。当社ではアウトソーシング事業の11年12月期の売上構成比が20%を超えるまでに急成長しています。

今後もテレマーケティング系、業務系、製造系、技術系のそれぞれの分野において、業務設計や運用のチームをさらに強化して、アウトソーシング事業を拡大していく予定です。テレマーケティング、技術系、官公庁のアウトソーシングが増加していることから、将来的には売上全体の30%超を目指しています。

新卒採用代行を新しい事業としてはじめていますが、この分野は成長していますか。

採用代行はリーマン・ショック後の09年から新規事業としてスタートし、コンサルティングを強化したことでさらに成長しています。新卒採用は企業の規模や業界など、さまざまな要因で採用手法や採用時期などが企業ごとにまったく異なってきます。

有名企業では学生が多数応募してきてしまい、候補者の絞込みに苦労します。逆に中小企業では、学生を集めるのに苦慮しています。昨年から採用期間が短くなったことで、短期間に様々な業務が集中するようになり、さらに採用の難易度が増し、これまでの人事の採用体制では対応が難しくなったために需要が拡大しています。

また、人材採用の入口と出口を考えたときに、出口にあたる再就職支援事業を昨年末、グループ会社のライトマネジメントを経営統合することで強化しています。再就職支援は景気が悪いときに成長するため、他の事業とは補完関係にある重要な柱として位置づけています。

人材派遣会社のサービスは、どう変わっていくのでしょうか。

今後、日本が抱える雇用問題に対していかにソリューションを提供し、取り組んでいけるかに人材サービス会社としての社会的な意義があると考えています。

現在、日本の雇用には三つの大きな問題があると思います。一つは、若年層の就労です。直近の失業率は4.3%前後ですが、若年層の失業率は10%前後になります。諸外国を見ますと、ギリシャやスペインなどの南欧諸国の若年層の失業率は50%前後です。そこからみるとまだまだ日本は低いと思うかも知れませんが、高齢化社会を迎える日本にあっては社会保険制度を含めて高齢者を支えていくための若年層の労働力は非常に重要です。

二つ目は、労働力需給のミスマッチです。企業規模別の従業員数でみると、1000人以上の企業の有効求人倍率は0.6倍で企業側の買い手市場ですが、300人以下の企業では3.3倍で学生側の売り手市場となっています。大卒の就職活動では、依然として大企業志向が根強く、このようなミスマッチが発生しています。そのため、学生は希望する会社に入れない状況となり、一方では人材を必要としている中小企業があるのに、実際に就職できない学生が多くいるのです。

三つ目は、産業別のミスマッチです。高齢化社会を迎えるにもかかわらず、看護・介護職は慢性的に不足しており、将来的にもますますこの不足感が高まっていく傾向にあります。看護・介護の業界に人材が入ってこないこともありますが、この業界に人材が定着しないという問題もあります。

一方で日本を支えてきた製造業は、円高の定着で海外に拠点を移して空洞化が進行しており、人材に過剰感が出始めています。このように産業別でも人材のミスマッチが生じてきています。これらは今の日本が抱える代表的な雇用問題であり、総需要は一定程度あるにもかかわらずミスマッチが問題となっているのです。

人材派遣会社が果たす役割をどう考えますか。

グローバル化が進む中で、将来的には雇用鎖国を続けるのではなく、海外の人材をより活用できるように法制度を整え、民間レベルでも橋渡しをしていくべきでしょう。人材サービス各社がこれらの日本の雇用問題に、どのような解決策を提供することができるのかが、われわれに課せられた使命だと考えています。

また、日本人材派遣協会の調査では、派遣社員のままで働きたい人の割合と派遣社員から正社員になりたいという人の割合は、ほぼ同じ比率になっています。ワークライフ・バランスを取るために派遣社員を続けたいという人のためには、今後も派遣という雇用形態を守っていくことは重要な責務だと思っています。

そして、派遣という雇用形態を通じてキャリアを形成した上で正社員として働きたいという人には、キャリアコンサルタントが相談にのることができる体制を整備することが大事だと思っています。派遣業界はコンプライアンスの影響を強く受けますので改正派遣法の運用など、常にアップデートされた情報を的確につかみ、クライアントと派遣社員に情報提供していくことでリスクを減らしていくことが重要だと考えています。

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