諭旨解雇(ゆしかいこ)は、会社の秩序を乱した従業員に対して行う懲戒処分のなかで最も重い「懲戒解雇」の次に重い処分として知られます。「諭旨」には「趣旨や理由をさとし告げること。言いきかせること」の意味があり、懲戒解雇に相当する不祥事を起こした従業員に対して、重い処分とする理由を分からせたうえで温情的な措置をとった解雇です。ただ処分は懲戒解雇よりゆるやかになりますが世間からは重い処分をうけたという印象を持たれる可能性は否めず、解雇された側が納得しなければ訴訟に発展することもあります。
解雇は「使用者による一方的な労働契約の解約」と定義され、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇と大きく分けて三つの種類があります。普通解雇は会社の就業規則に理由が定められており「ケガや病気などによる労働能力の低下」、「無断欠勤など勤務態度の不良」といった雇用契約の内容を履行できない場合に解雇されます。整理解雇は会社がいわゆるリストラにより人員削減のため行うものです。懲戒解雇は会社の命令拒否や資金の横領など不正行為をはたらいて企業秩序を著しく乱した場合に制裁として行われる処分です。
懲戒解雇の場合は原則として退職金が支給されないか大幅な減額となり、失業保険の給付も制限されます。また普通解雇に比べて再就職する際にも影響を及ぼします。それほど重い処分となるため、会社側は懲戒解雇を行うにあたり就業規則で定められている懲戒事由に該当しているか確かめてから進める必要があります。また本当に懲戒処分に相当する行為があったのか、本人に弁明する機会を与えねばなりません。もし本人が関わっていない事実が発覚したらトラブルに発展して訴訟を起こされる可能性もあるからです。
諭旨解雇は懲戒解雇よりも処分はゆるくなるため退職金は全額払われるか若干の減額ですみ、失業保険の給付制限はあるものの再就職への影響はほとんどないといわれます。それでも懲戒解雇と同じように、処分に納得できないとして裁判を起こされた場合は「懲戒権の濫用」によって諭旨解雇を無効とされる可能性があります。諭旨解雇を行う際にも強制的な解雇であることを肝に銘じて相手の心情をないがしろにせず、30日前までに解雇予告を行うか、予告なしで解雇する場合には解雇予告手当を支払うなど正しい手順で進めることが大切です。