インシデントとは、「出来事」「事件」や「起こりがちな(形容詞)」を意味する英語「incident」に由来する言葉です。似たような言葉に「不慮の事故」「災難」を意味するアクシデント(accident)や、リスクマネジメントで使われる「ヒヤリハット」があります。インシデントとはそれぞれニュアンスが違うため、どのような場面で活用するのか正しく理解しておく必要があります。近年はIT業界をはじめ、インシデント管理を行うことで顧客サービスの向上をはかる企業が増えています。
インシデントは事故につながりかねない「出来事」「事件」を指し、アクシデントは起きてしまった「事故」を表わします。たとえば鉄道で走行装置やブレーキ装置などの車両異常が発生したときや、航空機が異常接近(ニアミス)した場合は重大な「インシデント」ですが、事故は起きていないので「アクシデント」とは呼びません。
ヒヤリハットは、労働災害や交通災害防止のために用いられる言葉です。あわや事故寸前というときの「ヒヤリ」「ハット」した経験が積み重なれば、重大事故につながるという「ハインリッヒの法則」に基づいた概念です。インシデントはビジネス用語として使われることが多いのに対して、ヒヤリハットは労働災害を防止するリスクマネジメントの観点から重要視されています。
ビジネスシーンでは、IT関連でインシデントを用いることが多くなりました。情報システムに不具合が起きて利用者のメールを受けつけない、顧客がサイトにアクセスできないといった事態はインシデントになります。不正アクセスやウイルス感染の可能性も考えられるため、もしクレジットカード情報が盗まれて不正利用され被害が出たらアクシデントに発展します。
インシデント管理とはインシデントが発生した際に、適切に対応することで事態を収めることを指します。可能な限り速やかにインシデントを解決してサービスを復旧することが目的であるため、根本的な原因を調査することより利用者へのサポートを優先します。 インシデント管理を行うことにより対応できる担当者が増えるため、人材育成につながり、利用者に対する迅速なサポートで満足度アップが期待されます。一方で原因調査よりサポートを優先させることから、同じようなインシデントがたびたび発生する可能性があります。管理を一元化することで、解決方法をデータとして蓄積し情報共有することが重要です。