改めて見直したい転勤制度~異動・転勤の法的規制や企業の対応について解説

近年、子育てや介護などを理由に引っ越しを伴う転勤を受け入れられず、仕事をやめてしまう「転勤離職」の問題が増加しています。また、ワークライフバランスが重視されるようになり、転勤のない働き方を選択する人も増えてきました。

 一方で、若手社員を中心に、キャリア意識の高まりもあって、自分の希望通りの部署へ配属されないことでやる気を失い、早期離職につながるケースも増加しています。  このような状況の変化を背景に、慢性的な人手不足に悩む企業では、異動・転勤ルールを見直すケースも増えてきていますので、異動・転勤に関する法的規制、近年の企業側の対応状況などについてKKM法律事務所パートナーで田代コンサルティング代表取締役の田代英治社会保険労務士に解説してもらいます。(文:田代英治社会保険労務士、編集:日本人材ニュース編集部

人事異動の目的、実務、法的留意点

そもそも人事異動は何のために実施されているのでしょうか。

一般的に、企業が実施する人事異動には次のような目的があるとされています。多くの会社では、いずれか一つの目的に限らず、複数の目的が存在していると考えられます。

人事異動の主な目的

従業員の適材適所の配置

最大の目的は、従業員の適材適所を考慮すること。従業員が能力を発揮できそうな部署へ異動が行われる。

組織の活性化

同じメンバーが長期間同一部署で働き続けると、人間関係の馴れ合いや業務への怠慢といった問題が起きる傾向があり、企業が組織を活性化するための異動も正当な目的の一つ。

事業活動の変化への対応

事業活動の変化に対応するため、異動を行うケースもある。従来の部署から適性のある人材を異動することで、新規プロジェクトや新設部門の業務がスムーズになる。

従業員の人材育成

総合的なビジネススキルを持つ人材を育成することを目的に行われる。人材を育成するにあたり、「定期的な異動を行うことで、経験を積んでもらう」という考え方(ジョブローテーション)。

モチベーションの維持・向上

人事異動で社内に新しい風を吹かせることで、従業員のチャレンジ精神を刺激する。

人事異動の方法に決まりはありませんが、一般に次のような手順で実施されます。

人事異動の手順

内示

まずは、異動を予定している従業員に内示する必要があります。直属の上司や上層部から口頭で通知します。正式な辞令の2カ月前、遅くとも1カ月前には内示を出すのが一般的だと思います。法的な決まりはありませんが、業務の引継ぎ期間や転居の有無も考慮して内示の時期を設定します。

辞令交付

辞令とは、役職への任命を従業員に伝えることをいいます。また、そのために作成・交付する文書のことです。配置転換の辞令は、原則として、従業員の同意がなくても発令可能です。

実施

異動を実施したあとは、異動後の効果を検証することも大切です。異動後においても該当する従業員を気にかけて、キャリアプランを確認していけるような環境を保つことが求められます。

労働者を採用した後、会社が業務上の理由から就業場所や従事する業務を変更することは、変更がない旨の特別な合意等がない限り可能です(第1項)。

しかしながら、労働者の意に沿わない就業場所等の変更を命じた場合、トラブルが生じ得ますので、本規則のように就業規則に明記しておくことが望ましいと言えます(第3項)。もちろん、労働者の同意を得るようにすることが大切であることは言うまでもありません。

なお、労働者の就業場所を変更しようとする場合には、労働者の育児や介護の状況に配慮しなければなりません(育児・介護休業法第26条)。また、他の会社へ出向させることが想定される場合、出向に関する規定を設けておく必要があります(第2項)。

就業規則への記載

モデル就業規則(人事異動)
第8条  会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。 3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

転勤(配転命令権)は、根拠規定があれば会社に広い裁量があります。ただし、労働者の不利益が特に大きい場合等以下の場合には、裁量権が濫用として無効となることがあります。また、入社の時点で勤務地が(たとえば東京等に)限定されている場合も転勤命令は無効となります。

実施の注意点と違法になるケース

就業規則に明示されていない

就業規則や労働協約上の根拠規定(前掲)に基づく異動であれば認められます。なお。個別の労働契約に職種や勤務地が限定されている場合、配転命令は認められません。

業務上の必要性がない

従業員の人材育成や適材適所の処遇、組織の活性化といった人事施策の範囲内であれば、業務上の必要性が認められるケースが多いといえます。

著しい不利益が従業員に生じる

たとえば、「従業員が複数人の家族を介護している」「家族帯同による転居が困難である」といったケースでの転勤命令は、従業員に著しい不利益があるとして転勤が無効とされる恐れがあります。

権利濫用にあたる

従業員に対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合は権利濫用とされます。権利濫用かどうかの判断は、「業務上の必要性」と「該当する従業員が受ける不利益」の比較衡量に委ねられます。

人員選択の合理性がない

たとえば、「特定の信仰・宗教や支持政党などを理由に人選が行われた場合」「私怨による人選が行われた場合」といったケースに合理性はないといえます。

転勤(配転命令権)に関する裁判例

転勤(配転命令権)に関するリーディングケース

●東亜ペイント事件 (最高裁昭和61年7月14日判決)
全国に営業所を有する企業の営業職として勤務していた従業員の事例です。入社時には勤務地域が限定されていなかったものの、ポストに空きが生じた営業所への異動が命じられました。

当該従業員は、自活可能な71歳の母、共働きの28歳の妻、2歳の子どもとの生活を理由に配置転換を拒否しました。企業側は就業規則に基づく処分として懲戒解雇を命じます。それに対して、当該従業員は「転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は無効」として提訴しました。

最終的に、最高裁において「転勤命令と懲戒解雇は有効であった」という判決が出ました。就業規則に明示があり、現に転勤に応じる従業員が行われている状況下において個別の合意は不要という判断です。 「業務上の必要性の有無」「不当な動機・目的の有無」「不利益の程度(通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものかどうか)」が判断要素となったと考えられますが、近年では育児や介護に対する認識が変化しています。育児介護休業法が改正されたこともあり、判定基準が厳しくなりつつあります。

職種限定合意が存在する場合の配転命令の適法性

滋賀県社会福祉協議会事件(最高裁令和6年4月26日判決)
技術職として長年勤務した従業員を事務職に配置転換することの妥当性が争われた損害賠償請求訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は4月26日、職種を限定する労使合意がある場合、使用者側が一方的に配転を命じることはできないとの初判断を示した。配転命令を有効とした二審大阪高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

二審判決によると、原告の男性は滋賀県社会福祉協議会と労働契約を結び、福祉用具センターで主任技師として勤務。2019年に総務課への配転を命じられた。

男性側は、同一職種・同一部署で18年間にわたり勤務してきたとして「書面での明示はないものの、技術者として就労させる旨の職種限定の合意が事実上あった」と主張。団体側は「職種限定採用ではなく、配転には業務上の必要性もある」と反論していた(共同通信社2024年4月26日)。

労働条件の明示ルールの改正

改正の背景

2024年4月1日から労働条件明示のルールが改正され、労働条件の明示事項等が変更されました。

労働条件明示のルール変更が行われる背景には、これまで勤務地や職種の限定の有無が労使トラブルになったり、限定されたはずの内容が一方的に変更される場合等もあったため、紛争の未然防止の観点から労働契約関係を明確化させる狙いがあります。

転居が伴う転勤は生活環境の変化を迫ることになります。夫が外で働き、妻が家庭を守るといった性別役割分担が根強い時代ならば急な転勤辞令でも家族一緒に引っ越しもできました。ただ、共働きも増えた現代では、それも難しくなってきています。ルール変更は個人が人生設計を立てやすくする狙いもあります。

就業場所・業務の変更の範囲の明示(労働基準法施行規則5条の改正)

全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。

なお、「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。

従来は雇用・募集の際、採用直後の就業場所・業務の内容を示せばよかったのですが、今後は勤務する可能性のある場所や従事する可能性のある業務の内容を事前に伝えなければならなくなりました。

モデル労働条件通知書の記載例

就業場所・業務に限定がない場合

・就業場所・業務に限定がない場合は、すべての就業場所・業務を含める必要があります。
・予見可能性の向上やトラブル防止のため、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明確にするとともに、労使間でコミュニケーションをとり、認識を共有することが重要です。

勤務場所:(雇入れ直後)本店及び労働者の自宅
     (変更の範囲)本店及び全ての支店、営業所、労働者の自宅での勤務
従事すべき業務(雇入れ直後)広告営業 (変更の範囲)会社内での全ての業務

*)あらかじめ就業規則でテレワークについて規定されているなど、テレワークを行うことが通常想定されている場合は、就業場所としてテレワークを行う場所が含まれるように明示してください。

就業場所・業務の変更範囲が一定の範囲に限定されている場合

勤務場所:(雇入れ直後)東京本社
     (変更の範囲)東京本社、大阪支社及び名古屋支社
従事すべき業務(雇入れ直後)運送 (変更の範囲)運送及び運行管理

転勤制度に関する課題への対応

厚生労働省は、2017年3月に転勤制度を見直す際の考え方やポイントを示したガイドライン(転勤に関する雇用管理のヒントと手法)を作成し、企業に活用を呼びかけています。この資料は、次の3つのパートで構成されています。

厚生労働省のガイドライン(「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」)の活用

  1. 転勤に関する雇用管理について踏まえるべき法規範
  2. 転勤に関する雇用管理を考える際の基本的な視点
  3. 転勤に関する雇用管理のポイント

上記③では、転勤の目的や効果を改めて検証し、人材育成などについても転勤以外の方法はないか検討することが有効だとしています。

その上で、定期的な面談などで社員の意向や家庭の事情を把握したり、転勤の回数や赴任期間を明確化するためにその目安を社内で共有することも考えられるとしています。また、転勤が決まった場合には時間的な余裕を持って社員に伝えることが重要だとしています。

転勤制度をめぐっては、一部の企業に引っ越しを伴う転勤を原則廃止にしたり、転勤を一時的に猶予できる制度を設ける動きも出ています。企業には転勤させる社員の数を必要最小限に絞り込んだり、転勤の同意を得ていく努力も求められています。

(参照)転勤に関する雇用管理のヒントと手法(厚生労働省ホームページ)

【参考】転勤をめぐる最近の動向
〇 国内転勤に関する取り扱いの実態調査 (労務行政研究所2021年)

  1. 日程ルール(転勤の「内示→発令→赴任」など一連の手続きにおける日程ルール)
    「日程ルールがある」企業は44.7%、「ルールはない」企業は54.1%。
    発令前の内示は、「30日(1カ月前)」以前が35.7%で最多、「14日」以前が25.0%で続く。発令後の赴任は、「14日」以内が42.6%で最多。「10日」以内と「30日(1カ月)」以内がともに14.9%で続く。
  2. 転勤者の選定における本人事情への配慮
    一般社員、管理職とも「配慮する」が約8割。配慮する事情は、一般社員、管理職とも「本人の健康状態」「家族の病気・介護」が8割台。
  3. 転勤者の選定における本人の意思の反映
    一般社員、管理職とも「本人の意思・自己申告に配慮しながら相談の上で転勤を行う」が5割以上
  4. 転勤拒否・辞退への対応
    「理由により認める」企業が69.6%、「認めない」企業は30.4%
    転勤拒否・辞退への対応としては、「懲戒処分を科す(検討する)」14社/256社、コース転換、「社員区分の変更」13社/256社、「人事評価や査定、昇格に反映」7社/256社、「退職を勧奨など」6社/256社
  5. 支度料の支給基準と水準
    支給基準は「単身・家族帯同別に支給」が9割を超える。職位別に支給水準を見ると、家族帯同赴任の場合、部長級24万781円、課長級22万7674円、係長級20万7424円、一般社員18万4813円
  6. 単身赴任手当の支給基準と水準
    「一律に定額を支給」が50.4%。「一律に定額を支給」する場合の支給額の平均は4万3603円
  7. 単身赴任者の一時帰省往復交通費
    「帰省した場合にのみ交通費を支給する」が61.4%で最多。支給頻度は「月1回(または年12回)」が約6割
  8. 地域限定社員制度
    「地域限定社員制度がある」企業が34.5%。具体的な制限の内容は、「転居を伴わない範囲に異動を限定」が65.0%で最多

企業の転勤については、共働き世帯の増加などに伴い、若い世代を中心に拒否感が強まっており、企業都合の転勤は離職の理由になりかねません。

エン・ジャパンの調査(2024年)によれば、69%が「転勤は退職を考えるきっかけになる」と答えるなど転勤に拒否感を持つ人が増えています。就活生にとっても大きな関心事になっており、マイナビが25年卒の学生向けに実施した調査で「転勤が多い会社に行きたくない」とした人は3割を超えています。

一方で、新たな人間関係を築き、小さな拠点で大きな裁量の仕事を経験できる転勤はこれまで重要な人材育成法とされてきましたし、居住地域にポストがなくても、ほかの地域に転じればポストを見つけられる場合もあります。

このような利点も考えると、今後も全国に拠点を持つ企業が転勤を前提にした人事制度をすぐに解消することは難しく、以下のような経済支援などで納得感を持たせることで対応しようとしています。

転勤制度の見直し事例(参考:日本経済新聞2024年4月29日記事)

  1. 引っ越しを伴う異動に手当を手厚く支給
    明治安田生命保険は2024年4月、転勤する社員のモチベーション維持や転勤による離職を防ぐために、転勤支援策を拡充した。単身赴任手当を月額3万6000円から5万円に引き上げたほか、社宅補助を拡充し、社員の自己負担を減らした。転居を伴う異動を対象に最大50万円を支給する制度も新設した。
    全国に転勤する想定の総合職に対しても年1回、子育てや介護を理由に転勤を積極的に望まない「勤務地優先」か、転勤してもいい「職務優先」のいずれかを申告できるようにした。必ずしも希望通りになるとは限らないが、人事異動の判断材料にする。
  2. 家族への一時金を増額
    みずほフィナンシャルグループも2024年4月、転勤支援策を充実させた。家族を帯同する場合、最大15万円だった一時金を30万円に引き上げた。家族に対しても未就学児は1万円から9万円に、小学生以上は3万円から15万円に増額した。グループ5社約5万人を対象とする。さらに、毎月支払う手当も増やした。
    手当を増やす一方で見直した部分もある。これまでは同じ業務に取り組んでいても、転勤ありの旧総合職の方がなしの旧一般職と比べて給与が高かった。2024年4月からは転居を伴う異動がない期間は処遇の差をなくした。転勤する場合だけ経済支援することで、不公平感の解消につなげる。
  3. 転勤しなくても報酬を減額しない制度の導入
    ニトリホールディングスは2023年3月から、転勤しなくても報酬を減額しない「マイエリア制度」を始めた。東京か大阪の本部に通勤できる、入社4年目以降の社員が対象だ。そのうえで、転勤する社員に対しては手当を従来の2〜4倍に引き上げた。 同社は「転居のない働き方を求める社員の要望に応えた。従業員のエンゲージメント向上と人材確保につながると考えた」とする。

転勤のメリットは否定できませんが、近年共働きの増加などで状況は変化し、拒否感を持つ人が増えるなか、経済支援で納得してもらうのはもちろん、企業はその転勤が本当に必要かを問うことも欠かせないと考えます。それは社員本人の私生活だけではなく、パートナーのキャリアを守ることにもつながります。

人手不足にあえぐ企業は、今いる社員一人ひとりにベストの状態で働いてもらう必要があります。会社都合だけではなく、従業員都合に発想を切り替え、転勤についての要望を丁寧に聞いて対応することが重要になっていくことでしょう。

人事異動に関する企業の動向

従来、多くの日本企業は、全社での適切な人員配置や人員不足・欠員への対応、ジョブローテーションによる人材育成などの観点から、会社主導で人事異動を進めてきたように思います。

しかし、近年、社員の自律的なキャリア形成等が重視されていることを背景に、本人希望を考慮し、社内公募制度等の本人起点での異動を実現する施策を取り入れるなど、人事異動・配置転換に対する会社の方針を見直す動きも見られます。

この点、労務行政研究所の「人事異動・配置転換に関するアンケート調査」(労政時報第4075号/24. 4.12)が参考になります。

【参考】「人事異動・配置転換に関するアンケート調査」のポイント

  1. 定期異動の実施率と対象層
    定期異動の実施率は58.5%で、うち定期異動を「全社員を対象に実施している」企業が36.4%、「一部社員を対象に実施している」企業が22.1%。1000人以上では定期異動の実施率が77.3%である一方、300~999人は59.1%、300人未満は44.8%と、規模によって異なる。
  2. 2023年の1年間における定期異動の異動率
    「全正社員数」に占める「定期異動時に移動した社員数」の比率(異動率)は、「10~15%未満」が27.9%で最も多い。続く「5~10%未満」(24.3%)、「5%未満」(22.1%)も2割台であり、15%未満に7割以上が集中。異動率の平均は10.9%で、およそ10人に1人の割合。
  3. 対象者の選定における考慮要素と本人希望の確認・把握方法
    対象者選定の考慮要素(複数回答)としては、「スキル・能力・資格」が82.9%で最も多く、「職務経験・異動歴」(77.8%)、「本人希望」(75.9%)、「同一部署での経験年数」(72.2%)の4項目が7割以上。本人希望の確認・把握方法(複数回答)では、「自己申告制度を運用」が78.3%で最多。
  4. 人事異動案の作成主体と決裁権限
    異動案の作成主体について、部門をまたがない異動では「主に各部門」が6~7割だが、部門をまたぐ異動では、「主に人事部門」「主に各部門」「人事部門と各部門が半々」がいずれも2~3割で分散し、人事部門が関わる割合が増加。決裁権限の所在については、管理職の異動の場合は「経営層」が6~7割で最も多い一方、非管理職の異動は部門をまたがない異動と部門をまたぐ異動で決裁権限を持つ部門の割合が異なる。
  5. 定期異動のスケジュール
    異動案作成から定期異動実施までは「2~3カ月程度」が最多で64.1%。内示から異動実施までは「1カ月程度」が32.7%で最も多く、「2~3週間程度」を含むと全体の7割を占める。
  6. ジョブローテーション
    ジョブローテーションを実施している企業は44.7%。対象者の条件(複数回答)は在籍年数が67.1%で最多。ジョブローテーションの間隔は「4~5年」が50.8%で過半数を占める。
  7. 随時異動の実施状況と目的
    「実施している」企業は81.6%。規模別では、1000人以上が90.9%、300~999人が81.8%、300人未満が75.0%と、規模が大きくほど割合が高い。随時異動の目的(複数回答)は「欠員補充」が93.6%、「期中の組織改編」が84.5%。2023年の1年間における異動率の平均は5.4%で、「1~5%未満」52.4%と半数以上を占める。
  8. 会社主導と本人希望の異動についての方針・考え方
    「会社主導の異動を重視している」企業は62.4%である一方、「本人希望の異動を重視している」企業は2.7%にとどまる。
  9. キャリア自律を実現するための施策の導入状況(複数回答)
    「上司とのキャリア面談」(55.4%)が最多で、「自己申告制度」が53.4%で続く。以下、「社内公募制度」が30.7%、「勤務地限定制度」が21.5%。
  10. 社内公募制度の導入・運用状況
    社内公募制度の導入時期は「2019年以前」、募集頻度は「随時」がともに58.4%で最多。応募が可能な社員に「制限がある」企業は61.0%で、制限の内容(複数回答)は「勤続年数」が71.7%で最多。

なお、人事異動・人材配置に対する課題としては、「適材適所の配置」「組織・ポジションと人材のマッチング」「キャリア自律を踏まえた異動施策」「経営人材育成のための異動施策」等が上位に挙がっています。

人事異動・人材配置に関する今後の方針・検討事項については、「キャリアプラントの連動」「キャリアパスモデルの提示」「キャリア自律の浸透」「早期キャリアアップ」など、キャリアに係る事項が多くを占めています。

また、経営環境の変化に対応した適材適所の人材配置、将来の人員構成を見据えた異動を検討、会社最適を考えた異動計画のように、人事異動や人材配置を組織全体の重要テーマと捉えて推進、改良していく意向を示す企業も増えています。


田代英治(社労士)

田代コンサルティング代表/KKM法律事務所 社会保険労務士/人事労務分野に強く、各社の人事制度の構築・運用をはじめとして人材教育にも積極的に取り組んでいる。豊富な実務経験に基づき、講演、執筆活動の依頼も多く、日々東奔西走の毎日を送っている。(主な著書)『ホテルの労務管理&人材マネジメント実務資料集』(総合ユニコム、2018年7月)
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田代英治(社労士)

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