地域に越境して見えた、真のダイバーシティ。マネジメント層にも大きな学び【ふるさと兼業越境研修プログラム「シェアプロ」】

G-net 日立製作所 山田裕貴 金融デジタルイノベーション本部 第一部 部長

先行きが不透明で変化の激しい、「VUCA時代」と呼ばれる現代。そんな時代を生き抜くため、企業が時代に対応できる人材を育成する手法のひとつとして注目されているのが、自社業務と異なる環境での「越境学習」だ。そんな中、大手企業などの社員が地域の現場へと「越境」する実践型人材育成プログラム「シェアプロ」に社員を派遣する企業が増えている。事業担当者にプログラムの特徴、企業からの参加者にプログラムでの学びや業務における効果などを聞いた。

NPO法人G-net 掛川様

NPO法人G-net
「シェアプロ」事業担当者
掛川 遥香氏

地域課題解決と人材育成を両立させる「シェアプロ」

「シェアプロ」とは、地域中小企業・団体の事業推進・経営革新プロジェクトに期間限定で取り組む、越境学習をベースとした実践型人材育成プログラムです。

このプログラムでは、近年の経済環境の変化に対応することを目指した、企業の人材確保・育成のニーズに応えるため、地域の魅力的な企業と意欲ある主体的な人材をマッチングし、「実践の場」を通して学びます。地域課題の解決と、人材育成を同時に実現させることを目指すものです。

具体的には、週4~8時間程度、4~5カ月間にわたり地域企業の課題解決や新たな価値創造を行うプログラムを用意しています。大手企業社員などの参加者がグループに分かれ、受け入れ先の地域企業と共創チームを組んで地域課題解決、地域創生の現場に越境。イノベーション創出に向けて、提案にとどまらず現場で実践していきます。

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期間中に現地訪問を3回程度実施し、それ以外はリモートで進めるハイブリッド型です。本業を続けながら、プロジェクトの中核に入り込む経験ができます。

越境先は「課題先進地域」とも言えます。リソースが限られる中、利益追求だけでなく社会的責任やサステナビリティを重視した、より持続可能なソリューションが求められています。そうした中でのプロジェクトで、地域の実情や人を知り、これまで会社に適応する形で育っていた社員の視野が新たな形で広がっていきます。

G-net 図表2

こうした複数企業が参加する他流試合型のプログラムのほか、各企業に合わせたオリジナル型の研修も実施しています。この場合、上記のような実践型のほか、1泊2日~3泊4日程度の現地滞在を中心とした「フィールドワーク型」も可能です。

G-netでは2017年からシェアプロを実施してきました。現在では全国10地域のコーディネート団体と連携して展開しており、これまでに累計20社458名以上の大手企業社員などを送り出してきました(2026年2月時点)。

シェアプロ参加者の声

G-net 日立製作所 山田裕貴 金融デジタルイノベーション本部 第一部 部長
株式会社日立製作所
金融デジタルイノベーション本部
第一部 部長
山田 裕貴氏

本業の主な業務内容:
・金融機関に向けたシステム開発、サービス提供
・部下(50人)のマネジメント
シェアプロ参加期間:2024年9月〜2025年2月(終了後もプロボノとして活動を継続中)
プロジェクト参加地域:三重県尾鷲市
(受け入れ企業:株式会社尾鷲ヤードサービス、地域コーディネーター:一般社団法人つちからみのれ、シェアプロ生3人が参加)
プロジェクト概要:尾鷲ヤードサービスの経営改善を模索する中で、新事業として森に新たなキャンプサイトを設けることにした。その資金を集めるクラウドファンディングでは支援率1,218%を達成した。
尾鷲でのプロジェクト内容はこちら

シェアプロに参加した動機をお聞かせください。

会社の研修の一環で、さまざまな地域で活躍するリーダーの方々とお話しする機会がありました。その後も自主的にいくつかの地域を訪ねましたが、現地の社会課題や解決への取り組みを知るにとどまっていました。

シェアプロでは、長期間関わり共創チームで実行まで出来ることから、知るだけでなく自分が当事者になって取り組めると感じたのです。

山田さんの役割、実際に行ったことを教えてください。

他社からの越境者3名での打ち合わせと、受入企業である尾鷲ヤードサービスの方を含めた打ち合わせを、それぞれ週1回ずつリモートで行っていました。私はアジェンダを作り、ファシリテーションを行いました。

その際、尾鷲ヤードサービスの事業を四象限のマトリックスにして見える化したり、キャンプ場を訪れる人のペルソナ分析を行ったりもしました。

しかし、尾鷲ヤードサービスの方からは私の働きかけに対して感謝の言葉はあるものの、事業や売上にどう結びつくのか、すぐにはイメージが湧かなかったようです。打ち合わせで何か決めても、翌週になると議論が元に戻ってしまうこともありました。

プロジェクトを進めるポイントはどこにありましたか。

途中で尾鷲ヤードサービスの方が「森を活用したい」「クラウドファンディングをやりたい」とはっきり言ってくれ、みんながそれに向かって動けるようになりました。コーディネーターの方がシェアプロ生の思いを聞いてくれ、尾鷲ヤードサービスの方にもうまく伝えてリアクションしてくださったようです。

また、期間中に現地を3回訪れる中で、尾鷲への想いやそこに住む人への思い、「何とかしたい」という思いが強くなったと感じています。

結果的にこのクラウドファンディングは「クラウドファンディングアワード2025 by CAMPFIRE 上半期ベストプロジェクト」を受賞しました。この時は自分も「尾鷲のメンバー」と思って必死に広報活動を行っていましたね。

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アワードでは自然体験と持続可能エネルギーを融合させた構想力が評価された

シェアプロを通じて学んだこと、得たものを教えてください。それが仕事で生きている場面はありますか。

「多様性」を肌で感じることが本当に大切だと思いました。日頃のシステム開発では、関わる人の同質性を高めて着実に作っていきます。一方でシェアプロでは、ブレインストーミングのような形でアイデアを出すときに、他のシェアプロ生がちょっと変わったテーマ設定をしてくれ、そこから自分からは出ないようなさまざまな意見が出てきたのです。

また「WILL / CAN / MUST」を強く意識するようになりました。尾鷲ヤードサービスでは、会社のWILLと個人のWILLの重なりが大きく、だからこそ事業が加速すると感じたのです。

会社の規模が大きいと、会社のWILLと自分のWILLが重なるとは思ってもいない人もいます。ただ、それぞれの抽象度を上げていくと、重なりができてくると思います。

私が部長を務める部の方針にも、組織の方針と個人のやりたいことを重ね合わせ、やりたいことをどんどんやってほしいと入れています。それによって組織が活性化できると信じています。

さらに、私の体験談を聞いた部下の中から、地域のプロジェクトに飛び込んだメンバーや、組織の活性化につながる企画をするメンバーが現れてきました。一緒に尾鷲を訪れたメンバーも何人もいます。手を挙げて「やりたい」と言ってくれるメンバーが増えたと感じています。

他にも、普段はデスクワークの仕事が多いですが、シェアプロでは作業を行い、一緒に汗をかいたりして、目に見える形で貢献感を得られ、満足感もありました。そこで普段の仕事も、その先には消費者がいて社会貢献につながっていると再確認でき、自己肯定感も得られました。

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現地の方々とともに、森のデッキ作りを行った

シェアプロの期間終了後も、プロボノ※1として関わり続けているそうですね。

名前しか知らなかった土地に仲間や思い出ができ、愛着が湧きました。本業でプレッシャーがかかる時期もありましたが、本業以外の活動も行ってバランスを取り、モチベーション維持にもつながっていると感じます。

あまり先のことまでは考えていませんが、引き続きお付き合いをさせていただき、家族や同僚を連れて行ったりもしたいと思っています。

※1 プロボノ 職業上の経験やスキルを活かして取り組む社会貢献活動

社会課題・経営革新に深く関与出来る実践型越境研修「シェアプロ」の導入・お問合せは以下までご連絡ください。


NPO法人G-net(担当:掛川)

岐阜県岐阜市吉野町6-2 ブラザービル2階

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