退職代行の意外な利用実態! 入社後すぐ退職する新入社員への定着戦略とは

近年、退職代行サービスを行う企業は増加傾向にあり、多くのメディアがサービスを取り上げるようになった。では、退職代行サービスの利用者は、メディアが注目するほど多いものなのだろうか。 この記事では、退職代行サービスの利用実態を確認した上で、退職代行の利用が多いとされる新入社員の離職状況と、新人を定着させるうえで必要な施策を日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部

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退職代行の利用実態とサービスの一例

冒頭で触れたとおり、退職代行はメディアで大きく取り上げられることが多いサービスだ。特に新入社員に関しては、「入社後すぐに退職代行サービスを使い、会社を辞めることができた」などの伝え方をされることが多くなっている。

しかし実際は、離職者全体から見て退職代行サービスを利用している人は、ほんの一部だ。詳細は後述するが、近年の日本では、新入社員の早期離職が多くなっている。ただ、その離職者の多くは退職代行サービスを使っていないのが実情だ。

なお、退職代行サービスには、以下のようにさまざまな種類がある。運営者も民間企業から労働組合、弁護士まで非常に幅広い。

サービス名料金
退職代行モームリ正社員・契約社員・派遣社員:22,000円(税込)
退職代行ガーディアン24,800円
辞めるんです27,000円(税込)
退職代行Jobs(ジョブズ)27,000円(税込)
退職代行ニコイチ27,000円(税込)
弁護士法人みやびの退職代行サービス55,000円(税込)
退職代行サービスSARABA24,000円(税込)
EXIT20,000円(税込)
やめたらええねん。正社員・契約社員・派遣社員22,000円(税込)

入社直後に退職する新入社員の多さ

先述のとおり、退職代行サービスの利用者はそこまで多くない。しかし近年では、新入社員が入社後すぐに辞めてしまう事例がとても多くなっている。

パーソルキャリア(東京・千代田、瀬野尾裕社長)は、同社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」の会員登録者数を分析している。この調査結果によると、2023年に登録した新社会人の数が、2011年の調査開始以降で過去最多だったことが判明した。また、2023年と2011年の会員登録者数を比較すると、約30倍まで増加したことも分かっている。

4月度doda会員登録者数の推移

2011年の会員全体の登録者数=1、2011年の新社会人の登録者数=1と定義
(出所)パーソルキャリア「新卒入社直後のdoda登録動向」

近年の日本では「終身雇用は崩壊し始めている」と言われることが多く、入社間もない頃から転職を視野に入れ、自身のキャリアについて柔軟に考える新入社員が多くなっている。

また、パーソルキャリアでも、「不確実性が高まり続ける現代社会において、自身の「はたらく」将来に不安を抱くようになりました。結果、転職・副業などを通じ、自己成長やスキルアップを図り、自らの市場価値を高めることを強く意識するようになっています。」としている。
(出所)パーソルキャリア「『新卒入社直後のdoda登録動向』最新版を発表」

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入社後3カ月目の新入社員は退職に要注意

新入社員の退職で特に注意したいのが、入社から3カ月目の時期だ。この時期は、「入社3カ月目の壁」という言葉があるほど、退職者が増えやすい時期である。

入社から3カ月目で退職が起こりやすい理由

入社3カ月目で退職者が出やすい背景には、この時期の新入社員に精神面の不調が生じやすいことが大きく影響している。

まず、入社から3カ月ほど経つと、社会人生活に慣れることで気が緩み、急に疲れが出やすくなる。ここでいう疲れとは、少し休めば回復するような身体の疲労だけとは限らない。新入社員の場合、眠れない・気力が湧かないなどの精神面の不調に悩まされることもある。

また、入社から3カ月が経つと、教育係の先輩から仕事の基本を教えてもらう時期が終わり、一人で仕事を任されることが多くなってくる。ただし、この時期の新入社員は、自分だけで意思決定をしたりミスなく作業をこなせたりするほど、完璧に仕事を身につけているわけではない。

こうした状況で、例えばミスをして先輩から注意や叱責を受けたり、新人同期ができる作業を自分はまだマスターしていなかったりする状況に直面した場合、強いストレスやジレンマによってさらに精神面の不調が生じやすくなる。

また、同期と一緒に受けていた集合研修が終わり現場に配属されると、研修中には感じることがなかった以下のような気づきから、退職原因につながる将来への不安や悩みも生じやすくなる。

・この仕事は自分に合っているのだろうか……
・こんなに厳しくハードな環境で、仕事をやり続ける自信がない……
・こんなに忙しくて大変な仕事なのに、自分の賃金は低すぎる…… など

入社3カ月目の新人退職を防ぐためにできること

入社3カ月目の退職を防ぐためには、上記のような精神面の不安や悩みに対して、会社側が有効な対策を講じることが大切だ。

まず、新入社員に不安や違和感を生じさせないためには、労働基準法などに則った適切な労務管理を行うことが必要となる。

例えば無理な残業を強要したり必要以上の土日出勤をさせるなど、いわゆるブラック企業と言われるような働かせ方をした場合はすぐに退職の原因となるだろう。

次に大切となるのが、新入社員が安心して働ける仕組みや体制づくりだ。

例えば、人事担当者・社会保険労務士・産業医などによる相談窓口を開設し、それを新入社員に周知しておくと、人間関係の悩みや心身の不調が生じたときに、本人が自ら相談しやすくなる。 また、入社から3カ月ぐらいの時期は多くの新人に不調が生じやすいことから、直属の上司による「1対1の面談」や「メンタルヘルス研修」といった会社側から新入社員に働きかける仕組みもあったほうが良いだろう。

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上司との関係から生まれる「離職予備軍」

新入社員の退職要因はほかにもある。それは上司との関係だ。

ラーニングイノベーション総合研究所の「若手社員の意識調査(社会人1年目)2023年」では、新入社員が入社前に感じていた不安・ギャップが「入社後にどう変わったか?」を調査している。

この調査結果で注目したいのが、上司の対応に関する項目でネガティブな評価をしている新入社員がとても多い点だ。 例えば、「上司とのコミュニケーション」という項目では、「厳しくて話しにくい」と答えた新人が34%となっており、「フランクで話しやすい」の30.3%を上回る結果になった。また、以下の質問項目でも、4割前後の新入社員がネガティブな評価をしている。

・【上司からの仕事のアドバイス】細やかではない(37.7%)
・【上司への悩み相談】細やかに相談できない(42.0%)
・【上司からのスキルアップサポート】サポートしてもらえない(37.7%)

上司に対してこうした想いを抱く新入社員は、“離職予備軍”の可能性が高い。

例えば、新人の場合、仕事の知識や経験も浅いことから、作業中に「これはどのように処理すればよいのだろう?」と悩んだり、手が止まったりすることも多い。こうしたときに、例えば上司が高圧的で質問・相談できない場合、新入社員は自分ひとりで不安や悩みを抱え込むことになり、精神的負担も大きくなってしまうだろう。

このように、上司を要因とする新入社員の退職を防ぐためには、新人が気軽に質問・相談できる風土づくりや、新人育成・OJTのあり方を変えるといった定着に向けた施策も必要となってくる。

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新人を退職代行に頼らせない定着戦略を

退職代行サービスの利用者は、実のところメディアが取り上げるほど多くない。

しかし近年では、新入社員の早期離職者が非常に多くなっている。なかでも特に注意したいのが、入社から3カ月目に入った新入社員だ。

新入社員が入社3カ月目で早期離職する背景には、新人ならではの精神的な不調・ジレンマ・不安といった多くの要因がある。また、上司とのコミュニケーションがうまくいかず相談・質問しづらい場合、仕事をするなかで不満や違和感を募らせる“離職予備軍”になっている可能性もあるかもしれない。

今の時代は、少子高齢化などの影響から多くの業種で売り手市場になっている。こうしたなかで、獲得した新入社員を定着させるためには、記事内で紹介した定着戦略・施策を実施することも必要だろう。

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