専門家に聞く「事業成長のための人材獲得に向けた企業の課題や取り組み」

多くの企業が人材を奪い合う状況となり、これまでの人事制度のままでは人材の確保が難しくなっている。企業の人材マネジメントを支援している専門家に、事業成長のための人材獲得に向けた企業の課題や取り組みなどを聞いた。(編集:日本人材ニュース編集部

日本人材ニュース

ジェイ エイ シー リクルートメント 
山田 広記 常務取締役 事業本部長

ジェイ エイ シー リクルートメント
山田 広記 常務取締役 事業本部長

事業課題と候補者への期待などを、率直に、魅力的に伝える

ミドルクラス以上については、欠員による人員募集ではなく、事業戦略に基づく採用のご相談が増えていると感じています。昨今は大手企業を中心に賃金も上がり、働き方などの職場環境も改善されているため、内定を出しても現職と比べて辞退となるケースもあります。採用に際しては事業の課題と候補者に対する期待などを、率直に、魅力的に伝えられるかが重要です。
また、組織長の後継者選定にあたって、社外の専門性と経験値を持った役職者を入れたほうがよいのか、自社の風土がわかる社内メンバーを育成していくべきなのかなどの相談もあります。いずれも求人票や職務経歴書だけではわからないことも多く、その分野に明るいエージェントへの相談がミスマッチを防ぐカギとなっています。

ROXX 
中嶋 汰朗 代表取締役社長

ROXX
中嶋 汰朗 代表取締役社長

AIで削減できた時間を求職者と関係を深めるために充てる

業界や職種、雇用形態を問わず、スマホ一つで誰もが簡単に求人を探せる現代において、労働人口減少による売り手市場も重なり、従来ほど手間をかけずとも就職が決まりやすい時代です。特に若年層の「タイパ思考」は強く、選考が長引くほど辞退が増加することが当社のデータでも明らかになっています。
エントリーシートをはじめとする応募書類の多くがAIで代替され本来の意味を果たせなくなる中、生成AIが人事の代わりに面接をするAI面接サービスのニーズは今後さらに高まっていくでしょう。一方で、AIが発展するほど人間同士の関わりを重視する求職者も増えるでしょう。AIで削減できた時間を求職者一人一人と向き合い関係を深めるために充てることで、採用力は大きく向上するのではないでしょうか。

リロケーション・ジャパン 
髙橋 孝一 取締役

リロケーション・ジャパン
髙橋 孝一 取締役

賃上げでは差別化になりづらく、魅力ある住宅福利厚生を検討

人手不足による優秀な人材の確保・定着は人事の方にとって優先度の高い取り組みとなっています。特に新卒・内定者の囲い込み、若手の定着は課題で、単なる賃上げでは差別化になりづらく、学生・求職者は魅力ある福利厚生を求めています。給与のうち、家賃の支出割合は約4割を占め、家賃高騰により東京23区1K平均家賃は前年比1万2000円も上昇しました。
企業は「住宅支援の必要性」の高まりを感じています。仮に3万円の住宅手当を支給する場合、所得となるため社会保険料・所得税・住民税の課税対象となり、本人の手取りは2万円も増えません。そこで所得にせずに、実質家賃3万円の割引が可能な借上社宅制度の相談が増加しています。今後ますます魅力ある住宅福利厚生の検討が必要となってくるでしょう。

学情 
歌津 智義 執行役員

学情
歌津 智義 執行役員

第二新卒を「キャリア採用」ではなく「ポテンシャル層」と捉える

新卒採用の早期化・長期化が進む中、若手人材の確保に課題を感じる企業が増えています。新卒一本足打法では、安定的な若手確保がますます難しくなっているのが実情です。そんな中、採用にかかる期間が短く、競争率も低い第二新卒採用は、人事担当者の負担を抑えながら20代の採用を実現できる、現実的かつ有効な選択肢といえるでしょう。
重要なのは、第二新卒を「キャリア採用」ではなく「ポテンシャル層」として捉える視点です。カジュアル面談など選考を伴わない接触から始め、自社のカルチャーや仕事の魅力を丁寧に伝えることが定着への第一歩となります。変化が当たり前の時代において、前職の経験をもとに柔軟にアップデートできる第二新卒の再成長力こそ、組織の未来を支える力となるでしょう。

ビズリーチ 
小出 毅 執行役員 HRMOS事業部 事業部長

ビズリーチ
小出 毅 執行役員 HRMOS事業部 事業部長

社内外の労働市場を可視化し、最適な人材をタイムリーに登用

「働く人が企業を選ぶ」時代において、採用はゴールではなく、入社後の定着・活躍まで見据える必要があります。支援先の企業から「採用できたのに早期離職する」という課題を耳にしますが、「採用時のミスマッチなのか、入社後のオンボーディングの問題なのか」、原因が特定できないケースが多いです。
採用から入社後までの情報を一元管理することで、データに基づく対策を講じられます。例えば、定着・活躍データと採用チャネルを紐付け、採用戦略の最適化が可能になります。また、外部採用だけでなく社内の人材登用にも取り組むことが重要です。変化の激しいビジネス環境において、社内外の労働市場を可視化し、最適な人材をタイムリーに登用していくことが競争力のある組織作りに欠かせません。

HRBrain 
白井 崇顕 取締役副社長 CRO

HRBrain
白井 崇顕 取締役副社長 CRO

採用成功企業はAIを「データと判断」の高度化に活用

生成AIの普及で書類選考の精度低下や採用業務のコモディティ化が進む中、人事部門に求められる役割が変わってきています。スカウト文章の生成など作業の自動化だけでは、採用の本質的な課題は解決しません。採用は最終的に「人と人との営み」だからこそ、成功企業はAIを作業ではなく「データと判断」の高度化に活用しています。
具体的には、入社後の「定着・活躍データ」から自社に必要な人材要件を逆算して定義し、事業部を巻き込んだ採用プロセスを設計して見極め精度と歩留まりを高めています。単なる効率化の先に何をするか、採用から定着までを一貫して見据えた「人事の役割定義」が今問われています。データに基づくプロセスの変革こそが、採用競争を勝ち抜く鍵となります。

Sansan 
橋本 剛 Eight事業部 Eight Career Design部 部長

Sansan
橋本 剛 Eight事業部 Eight Career Design部 部長

転職潜在層へアプローチし、関係構築を戦略的に進める

生成AIの普及を背景に、多くの企業で即戦力・専門人材の採用ニーズが高まっています。しかし、国内の採用活動は「今すぐ転職したい」と考える転職顕在層へのアプローチが主流であり、対象は就業者全体のごく一部に限られます。
さらに今後は転職を控えて現職でキャリアを積む「ビッグステイ」が広がる可能性もあり、求める人材の要件が上がる中で、競争はさらに激化すると考えられます。
打開策として重要なのが、「良い機会があれば転職を検討したい」と考えている転職潜在層へのアプローチです。この層は転職市場にはまだ現れていないものの、就業者の中に広く存在しています。採用競争が激化する今こそ、この層との関係構築を戦略的に進めることが求められます。

揚羽 
昆野 玲 ブランドマーケティング部 次長

揚羽
昆野 玲 ブランドマーケティング部 次長

デジタルで発信しつつ、「温度感のあるストーリーや本音」を届ける

AIの普及が進み、求職者が書類作成等に積極的に利用する現在、採用における変化は単なる効率化に留まりません。企業と求職者との関係性を、根本から見直す変革期と言えます。
双方がAIを使うなかで企業が自動化を進めすぎると、採用選考は画一化し「冷たい」と敬遠されかねません。一方で、従来通りのアナログな手法に固執すれば、今度はAI検索の網からすり抜けてしまうジレンマに陥ります。
こうした矛盾を解決するのが、新時代に対応した「採用ブランディング」です。AIに届きやすいよう強みを整理してデジタルで発信しつつ、求職者の心を開く「温度感のあるストーリーや本音」を確実に届ける。「求職者からもAIからも選ばれる」情報設計が、これからの採用成功の鍵となるでしょう。

アクシスコンサルティング 
橋爪 智也 法人営業本部 本部長

アクシスコンサルティング
橋爪 智也 法人営業本部 本部長

正社員採用だけに頼らず、柔軟な人材活用を組み合わせる

人材獲得の最大の課題は、人材不足そのものではなく、優秀な人材から選ばれる理由を十分に示せていないことです。DX・AI・事業変革を担うハイエンド人材ほど、報酬や肩書きだけではなく、「どのような経営課題に挑戦できるのか」「どんな経験値を積めるのか」を重視しています。
採用に成功している企業は、求人要件を広げるのではなく、「何を実現したいのか」という経営課題や期待役割を明確に言語化しています。また、正社員採用だけに頼らず、フリーランスや副業人材も含めた柔軟な人材活用を組み合わせることで、変化の速い事業環境への対応力を高めています。
人材獲得は採用活動ではなく、経営戦略そのものになりつつあります。

miive 
栗田 廉 代表取締役CEO

miive
栗田 廉 代表取締役CEO

従業員のニーズと使いやすさに即した福利厚生制度の設計

福利厚生の本質は、単なる制度設計ではなく、人材獲得競争における企業の競争優位を左右する経営基盤として進化させることにあります。
従来は人事部門主導の画一的な制度が中心でしたが、優秀人材の獲得競争の激化や価値観・働き方の多様化を背景に、従業員のニーズと使いやすさに即した設計の重要性が高まっています。
福利厚生は、企業文化や価値観を採用市場に可視化する手段であり、採用力を規定する重要な要素の一つです。特に制度の利用実態は採用競争力を左右します。こうした中で「この会社で働きたい」と思われる状態の設計が経営課題となります。さらに従業員満足度の向上は離職率低下にとどまらず、人材獲得コストの最適化や企業価値向上にも寄与します。

ツナググループ・ホールディングス 
加藤 寛康 執行役員 マーケット開発本部 本部長

ツナググループ・ホールディングス
加藤 寛康 執行役員 マーケット開発本部 本部長

多様な人材と最適な仕事や役割と結び付ける「人材循環力」

労働人口の減少が進む中、多くの企業が人材確保を経営課題として抱えています。しかし、人材不足への対応を新規採用強化だけに求める考え方には限界が見え始めています。これから求められるのは、在籍社員や退職者(アルムナイ)に加え、過去応募者、副業人材、スポットワーカー等、自社と接点を持つ多様な人材と継続的につながり、必要なタイミングで最適な仕事や役割と結び付ける「人材循環力」の向上です。
こうした人材循環を実現する上で重要なのがDXです。従来の人事管理は在籍社員を前提としていましたが、今後は社内外を含む多様な人材との接点や経験、スキルデータを統合的に管理し最適なマッチングを実現する仕組みが求められます。企業の競争力は採用力ではなく、人材循環力によって決まる時代を迎えています。

ハッカズーク 
實重 遊 執行役員 アルムナイカンパニーCEO

ハッカズーク
實重 遊 執行役員 アルムナイカンパニーCEO

アルムナイ(現役世代の退職者)を企業の貴重な資産と捉え直す

労働力人口の減少や採用競争の激化により、優秀な人材の獲得が極めて困難になっています。また、新卒採用から経験者採用へ軸足を移す企業が増える中で、スキルだけでなく自社のカルチャーに適合する人材を見極める難易度も上昇しています。
このような状況を打破するために、退職を「縁の切れ目」と捉える従来の価値観から脱却し、アルムナイ(現役世代の退職者)を企業の貴重な資産と捉え直す発想転換が重要です。退職後もアルムナイと関係を継続することで、ミスマッチの発生しにくい即戦力人材として再度採用することにつながります。さらに、自社の事業やカルチャーを深く理解した人材だからこそ、正社員雇用に限らず、業務委託や副業という形でその力を「借りる」アプローチも有効です。

ジェイフィール 
高橋 克徳 代表取締役

ジェイフィール
高橋 克徳 代表取締役

経験や思いを重ね合い、ともに働く意味を実感できる職場をつくる

初任給を上げ、働き方を柔軟にし、制度を整える。それでも人が数年で辞める、辞めなくても仕事や会社から心が離れていく社員ばかりが増えていく。そんなことが起きていませんか。
「静かに分断する職場」では、仕事への思いも、仲間の大切さも、会社という場のありがたさも、誰も語らない、実感できない。入社前に語られた魅力と、入社後に味わう現実がずれていれば、期待は静かに失望へと変わります。
仕事が面白い、職場が楽しい、会社を誇れる。そんな感情が連鎖する対話と関係性がなければ前向きなエネルギーは生まれない。今取り組むべきは、多様な価値観の背景にある経験や思いを重ね合い、ともに働く意味を実感できる職場をつくること、コミュニティシップというエンジンを組織につくり出すことだと私は考えます。

レジェンダ・コーポレーション 
樋口 新 最高執行役員社長

レジェンダ・コーポレーション
樋口 新 最高執行役員社長

経営が採用を最優先テーマとし、人事と現場が一体となって動く

採用の早期化や手法の多様化、求める人材像の高度化によって、企業の採用力そのものが問われる時代になっています。採用力が事業成長を左右する局面だといえます。実際に多くの企業人事の皆さんからは、候補者への訴求や見極めの複雑化に加え、現場部門も人材不足の中で採用活動への協力を得にくいといった相談を伺います。
採用に強い企業では、経営が採用を最優先のテーマとして打ち出し、人事と現場が一体となって動いています。また、RPOやAIエージェントといった外部リソースや先端知識も取り入れ、その知見を自社の力として確実に積み上げています。こうした取り組みを通じて候補者に選ばれる理由を磨き続けることが、持続的な人材獲得力の向上につながります。

VOLLECT 
森本 明伸 代表取締役

VOLLECT
森本 明伸 代表取締役

ダイレクトリクルーティング成功の鍵は”魅力付けの設計”

大手企業でもダイレクトリクルーティングの導入が進み、カジュアル面談を取り入れる例も増えました。
しかし実際の面談を見ると、会社説明に終始し、候補者の志向も引き出せず、口説けてもいない――形だけのケースが少なくありません。
人材紹介は第三者として候補者を口説き、選考も伴走します。一方、ダイレクトリクルーティングは、自社が声をかけた相手。同じ選考フローのまま、面談の質も問わなければ決まるはずがありません。鍵は”魅力付けの設計”。
カジュアル面談から入社まで、人事自身が何を伝え、どう口説き、どうフォローするかを設計し切れるか。
声をかけて終わりにしない企業が、採用を制します。

スタメン 
古谷 敦史 グロース戦略本部 事業開発部 組織人事コンサルタント

スタメン
古谷 敦史 グロース戦略本部 事業開発部 組織人事コンサルタント

理念浸透や称賛し合う仕組みを組織の習慣として溶け込ませる

ノンデスクワーク領域で「正社員が採用できない」と悩む企業の多くから相談をいただきますが、その多くは採用戦略や求める人物像といった要件が曖昧な状態にあります。
採用に成功している企業は、現在の労働マーケットを正確に捉え、求める人物像の再定義や、外国人採用を視野に入れた受け入れ体制構築など、要件を柔軟に見直しています。
さらに、採用の真の成否を分けるのは、入社後の定着まで見据えた組織づくりにあります。従業員同士が信頼関係を育めるよう、企業理念の浸透や互いを称賛し合う仕組みを、組織の習慣として溶け込ませる必要があります。入口となる採用要件の定義と、定着につながる「働きがいのある組織づくり」を一体で進めることが、人材獲得を成功に導く重要な一歩となります。

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