
人としての器
羽生 琢哉 代表取締役社長
【PROFILE】人事分野の専門誌「労政時報」の編集者を経て、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)博士課程を修了。博士(システムデザイン・マネジメント学)。2021年に「人としての器」に関する研究プロジェクトを開始以降、研究チームを結成して「人としての器」に関する情報を発信。慶應SDM特任講師として、企業との共同研究に従事。筑波大学働く人への心理支援開発研究センター研究員を兼任。国家資格キャリアコンサルタント、一般社団法人キャリアアドバイザー協議会登録キャリアアドバイザー。
企業を取り巻く環境が大きく変化し、価値観の多様化が進む中で、心理的安全性や1on1といったマネジメント施策が次々と導入されています。しかし、現場からは「新しい制度を入れても職場の空気が一向に良くならない」「施策が形骸化し、むしろ疲弊感ばかりが漂っている」という切実な声が絶えません。
なぜ、良かれと思って導入した先進的な制度が機能しないのでしょうか。この八方ふさがりの現状に対する問題意識が、本書を執筆する原点となりました。
機能しない理由は、施策そのもののよしあしではなく、それを受け止める「器」にあります。
どれほど優れた制度や手法という「正しい中身」を注いでも、受け手である人や組織の「器」が未成熟であったり、ひびが入っていたりすれば、注いだものはすべて外へ漏れ出てしまいます。これまでの組織改革は、中身(制度や手法)を変えることばかりに注力するあまり、土台である器(組織のあり方や関係性)を育む視点が抜け落ちていなかったでしょうか。
筆者は、この「器」という抽象的な概念を研究対象とし、器を「感情・態度・自我・認知」の4要素から構造的に整理して、人や組織が本質的に変容していくプロセスを独自の「ARCTモデル(蓄積・認識・構想・変容)」として体系化してきました。
本書ではこの理論を基盤に、なぜ人や組織が変化や成長を止めてしまうのか、その根底にある要因を浮き彫りにしています。その上で、器を育むための傾聴や問答といった日常の対話作法から、人事制度や評価の仕組みを含めた「組織の器」づくりへの応用まで、現場の実務に落とし込むための具体的な道筋を示します。
もちろん器と中身はどちらも重要ですが、まず土台となる「器」を整えてこそ、優れた制度や施策という中身が活きてきます。
小手先の制度や手法に限界を感じている人事担当者や、現場のマネジメントに日々悩むリーダーの方々にとって、本書が組織のあり方を見直す際の指針となり、一人ひとりがやりがいを持ち、最大限に力を発揮できる組織づくりの一助となれば嬉しく思います。

羽生琢哉 著
日本能率協会マネジメントセンター
2,200円+税












