3段階で適用となる外国人雇用管理指針改正~その目的と企業対応のポイントを解説

「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(以下、「外国人雇用管理指針」)」が改正され、2026年6月14日、2026年10月1日、2027年4月1日の3段階で適用される。

深刻な人手不足を背景に企業における外国人採用が活発化し、今後も継続的な拡大が見込まれる中、重要となってくるのは外国人労働者の不法就労対策や人材定着に向けた取り組みだ。

改正外国人雇用管理指針から、外国人材の労務管理のポイントについて、丸山博美社会保険労務士に解説してもらう。(文:丸山博美社会保険労務士、編集:日本人材ニュース編集部

日本人材ニュース

「外国人材の保護・定着」「不法就労排除」を目的とした改正外国人雇用管理指針

外国人雇用管理指針とは、厚生労働大臣が定める告示であり、外国人労働者を雇い入れる事業主が講ずべき措置が整理されています。具体的には、外国人労働者に対する労働関係法令の遵守、適正な労働条件の設定・明示、社会保険適用、生活支援、在留資格の確認等に関わるルールが規定されています。

2026年6月以降適用の外国人雇用管理指針改正のポイント

まずは、このたびの改正項目を一覧で確認しておきましょう。改正外国人雇用管理指針では、2026年6月及び10月、2027年4月と、企業が3段階で対応すべき項目が明記されました。

〇 2026年6月適用
・同一労働同一賃金ガイドライン適用
・日本語学習支援の拡充
・在留カード読取アプリの活用推奨

〇 2026年10月適用
・パートタイム・有期雇用労働者に対する雇い入れ時の労働条件明示事項追加

〇 2027年4月適用
・育成就労制度施行に伴う雇用管理の実施

企業に対して新たな取り組みを求めるものはごく一部であり、主だったものは外国人労働者に対する「既存の労務管理の徹底」に関する内容となっています。

改正項目から読み解く、外国人雇用管理指針改正の目的

本改正の重要な目的として、まず挙げられるのが「外国人労働者の保護・定着を図るための処遇改善」です。

ひと昔前までは、外国人労働者に対して「安価」「臨時」の労働力といった認識を持つ日本人も少なくありませんでした。しかしながら、働き手不足が深刻化する今日においては、企業側が外国人労働者を人的資本として捉え、その有する能力の十分な発揮を実現させることが急務となります。

そのための第一歩は、外国人労働者が安心して働けるような環境整備、日本人労働者同様の処遇の確保に他なりません。

併せて、今回の改正ではアプリを用いた在留カード確認が推奨される等、外国人雇用に際し問題視される「不法就労対策」にも本格的に乗り出していこうという方向性が示されています。

改正外国人雇用管理指針が適用 2026年6月以降、求められる企業対応を知る

外国人雇用管理指針は、外国人労働者に対し、言語・文化の相違に配慮した上で、日本人労働者同様に日本の労働関係法令を適用した雇用管理の徹底を求めるものです。2026年6月以降に適用となる改正外国人雇用管理指針において、必要となる企業対応を確認しましょう。

2026年6月:同一労働同一賃金ガイドライン適用

短時間・有期雇用労働者や派遣労働者を雇用する事業主には、「同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇差の禁止等に関する指針)」の遵守が求められます。

同一労働同一賃金ガイドラインは日本国内の企業で働く非正規労働者を幅広く適用対象とするもので、労働者の国籍によって適用の要否が区別されるものではありません。

改正外国人雇用管理指針には、外国人労働者であっても同一労働同一賃金の適用を受ける旨が明記され、実態として問題視される外国人労働者に対する不適切な処遇の改善が目指されています。

企業においては、外国人労働者に対し、雇用形態及び日本人であるかどうかの違いによって不合理な待遇の相違を設けていないかを改めて確認する必要があります。

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」

2026年6月:日本語学習支援等の拡充

外国人雇用管理指針では、事業主は「国又は地方公共団体が実施する日本語教育推進に関する施策に協力すること」、そして「雇用する外国人労働者及びその家族に対する日本語学習の機会の提供や日本語学習支援」に努めなければならないとされています。

そのための具体的な取り組みとして、外国人労働者を雇用する現場においては、日本語能力に配慮した教育訓練の計画・実施が推奨される旨が本改正で明記されました。

併せて、日本人と外国人の共生社会の実現に向け、外国人労働者が日本語だけでなく、日本の風土や文化を理解するための取り組みに努めるべきことも盛り込まれています。

厚生労働省は、外国人労働者の日本語学習支援として無料で使える以下のコンテンツを紹介しています。

図の出典:厚生労働省 リーフレット「外国人雇用管理指針改正の主なポイント」

2026年6月:在留カード「読取アプリ」の活用推奨

このたびの改正では、外国人採用時に不可欠となる在留カードの確認に役立つ「在留カード等読取アプリケーション」の活用が推奨されます。このアプリは、在留カードに組み込まれたICチップ内の情報を読み取り、券面の記載内容と照合することで偽造や変造を見破る機能を有しています。

図の出典:厚生労働省 リーフレット「外国人雇用管理指針改正の主なポイント」

在留カードの確認は外国人を雇い入れる事業主に義務づけられたものですが、今後は、一歩踏み込んだ対応が求められることになります。

改正外国人雇用管理指針には「当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には、処罰を免れない」旨が明記されたことから、企業においては「在留カードを見て終わり」ではなく、アプリを用いた確認作業の徹底を心がけましょう。

なお、2026年6月14日からは「新様式の在留カード」及び「特定在留カード」の運用が開始されました。特定在留カードとは、在留カードとマイナンバーカードがひとつになった新しいカードです。新様式となるいずれのカードにおいても、券面に印字されない重要項目があるため、詳細の確認には「読取アプリ」の活用が必須となります。

参考:出入国在留管理庁「在留カードとは?」

2026年10月:パートタイム・有期雇用労働者に対する雇い入れ時の労働条件明示事項追加

2026年10月より、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れた時の労働条件明示事項として、現行の明示事項に加え、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が必要となります。

パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正に伴うものですが、日本人労働者だけでなく、外国人労働者にも同様に適用する必要があります。


具体的には、労働条件通知書に窓口の記載を設ける方法にて対応します。


なお、外国人労働者への説明では、母国語等を用いる等、本人が理解できる方法での対応が求められる点に注意しましょう。

図の出典及び参考:厚生労働省リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」

2027年4月:育成就労制度施行に伴う雇用管理の実施

2027年4月より、従来の技能実習制度に代わって新たな「育成就労制度」が施行されます。育成就労制度では、人手不足に対応するために外国人材を受け入れ、原則3年で特定技能1号水準へと人材育成を行うことが目指されます。

企業においては相応の育成支援体制が求められることとなり、基本方針等の内容に沿った雇用管理が必要となります。

改正外国人雇用管理指針には、以下の各項目に取り組むべき旨が明記されました。

・育成就労外国人が目標とする技能及び日本語の能力を修得できるよう取り組むこと
・送出機関が二国間取決めを結んでいる国又は地域の公的機関から推薦を受けている機関に限られていることなどに留意すること
・育成就労外国人が送出機関に支払う手数料が不当に高額とならないこと
(育成就労外国人が送出機関に支払う費用が月給の2カ月分を超えてはならない)
・育成就労外国人に対して転籍制限について説明を行うことなどを徹底すること

指針改正を契機に、外国人材受け入れに対する企業責務の再認識と労務管理の改善を

外国人雇用を巡っては、日本における働き手不足を背景に増加の一途をたどる中、外国人労働者に対する法令違反や労働条件等におけるトラブルが問題視されるようになっています。

日本において日本人労働者同様に働く外国人労働者に対しては、当然のことながら、日本人労働者同様の労務管理や処遇が必要となります。

こうした方向性で法整備が進む一方、受入企業における対応には、まだまだ進まぬ実態があるようです。

日本で働く外国人労働者数が毎年過去最高を更新し続ける状況下において、外国人労働者が日本経済を支える人的資本として位置づけられ始める中、日本企業には、労働市場の変化を踏まえた対応が求められます。

このたびの外国人雇用管理指針改正を機に、外国人雇用に係る企業責務の再認識、現場での必要な取り組みを今一度見直し、適正な取り扱いに努めてまいりましょう。

参考:厚生労働省リーフレット「外国人雇用管理指針改正の主なポイント」


丸山博美(社労士)

丸山博美(社会保険労務士)

社会保険労務士、東京新宿の社労士事務所 HM人事労務コンサルティング代表/小さな会社のパートナーとして、労働・社会保険関係手続きや就業規則作成、労務相談、トラブル対応等に日々尽力。女性社労士ならではのきめ細やかかつ丁寧な対応で、現場の「困った!」へのスムーズな解決を実現する。
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