【経営幹部の中途採用】採用加熱・争奪戦と、ローパフォーマーの降格・退出圧力の両面が強まる

経営幹部の中途採用

経営者JP
井上 和幸 代表取締役社長・CEO

【PROFILE】早稲田大学卒業後、リクルート入社。人材開発部等を経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。リクルートエグゼクティブエージェントにてマネージングディレクターを歴任後、2010年に経営者JPを設立。著書に『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『係長・主任のルール』(明日香出版社)等がある。取材・コメント・出演実績として、「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「週刊東洋経済」「プレジデント」その他業界誌等多数。

経営幹部人材市場においては、採用加熱・争奪戦と、業績を上げられない幹部の降格・退出圧力とが、両面非常に強くなる予兆を、ここ最近、痛烈に感じています。

特に日系の中堅クラス企業とベンチャー企業の経営者からダイレクトオーダーを多く受けている当社から見ますと、中堅企業では、事業変革にまつわる事業リーダー人材・戦略リーダー人材と海外事業(進出・現地マネジメント)にまつわるグローバルリーダー人材に関する依頼が日々寄せられています。

一方のベンチャー企業では、ここ最近上場を果たした企業や今後の上場を視野に急成長を遂げようとしているネットサービス系企業各社の事業系から管理部門系まで、幅広く経営体制強化のための幹部採用依頼を多数頂き続けているような状況です。

変革であれ拡大であれ、あるいは新規事業創出であれ、その具体化を急ぐ経営者の意識の高まり(危機感)を非常に強く感じており、上記のようなセグメントでの実務力・リーダーシップのある経営幹部へのアサインメントを急がれます。

一方で、実務力・執行力に欠ける「名ばかり」幹部についての処遇・待遇を含めた厳しい対処の方法についての相談が急増しているのも現況での特徴かと思います。

求職者側の傾向として、二極化はより差が大きくなっており、一方で、自身の職務展望・テーマ・企業への貢献ポイントを明確に自己認識され、その上でのベストマッチにこだわる「成功組」と、方向性も強みの自覚も曖昧なまま、現職への不満から闇雲に求人案件に当たりまくる「失敗組」とが、はっきりしてきているように感じます。

前者の「成功組」は自身にフィットする職務に出逢える機会は現在、非常に高まっていると言えますので、自身の職務ターゲットにフィットする案件を保有するエージェントとしっかりコミュニケートされてベストマッチを目指して頂きたいと思います。

また、もしも後者の「失敗組」的な動きをしてしまっているとしたら、いくら求人が過熱している市況だとは言え、そのような幹部人材を採用する企業はありません(あったとしたら、採用基準があいまいな、企業状況としてもあまり先行きが望ましいとは言えない問題企業の可能性が高いです)。

しっかり、シニアクラス人材つぃての自身の棚降ろしをまず行い、その上で、「可能性と意味のある案件だけに応募する」ということを肝に置いた転職活動を行って欲しいと思います。そうすれば、トンネルの先の光は必ず見えてくるでしょう。

企業としては、優秀な幹部人材争奪戦に入った今、自社の事業体制・マネジメント体制を改めて明らかにした上で、自社の方向性をしっかり候補者に伝え、口説く姿勢が大事です。選考スピードにも留意して頂きたいと思います。

お忙しい経営陣・事業責任者の方々が関わられる幹部採用で、なかなか面接・面談の時間が取れないことは重々理解いたしますが、これからは数週間、1カ月以上選考期間を空けることは、そのまま他社に有力候補者を持って行かれることになると覚悟ください。

一方で、何か懸念を感じる候補者を安易に採用しない、ということもより重要になってきました。採用難から、妥協されて採用される企業も出てくるかと思いますが、入社後の幹部人材の不適応ほど、無用な負荷とコストのかかるものはないのですから。

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井上和幸

経営者JP 代表取締役社長・CEO/早稲田大学卒業後、リクルート入社。人材開発部等を経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。リクルートエグゼクティブエージェントにてマネージングディレクターを歴任後、2010年に経営者JPを設立。著書に『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『係長・主任のルール』(明日香出版社)等がある。取材・コメント・出演実績として、「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「週刊東洋経済」「プレジデント」その他業界誌等多数。

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