通年採用は留学生や第二新卒などを積極的に採用できることから、年々導入する企業が増えています。また、日本企業の中には、通年採用を実施する外資系企業と同時期に採用活動に取り組むことで、優秀な人材を取られないようにする意図もみられます。本記事では、通年採用の意味からメリット・デメリット、導入企業などについて日本人材ニュース編集部が解説します。(文:日本人材ニュース編集部)
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内定辞退続出の新卒採用【“離職予備軍”も急増 転換迫られる採用戦略/26年卒の採用計画達成へ 採用手法の最新トレンド】
目次
通年採用とは?
通年採用とは年間を通して採用活動を行うことを指します。採用の時期や期間が限定されおらず、採用対象者の幅が広いことが特徴です。採用対象者は留学生や第二新卒、既卒など多岐に渡っています。
通年採用と一括採用の違い
通年採用 | 採用期間を設けず、通年で採用する手法 |
一括採用 | 経団連が定めた就活ルールに沿って、まとめて採用する手法 |
通年採用と一括採用の代表的な違いは採用期間の範囲になります。日本企業が行う新卒採用の大半は一括採用です。一括採用は、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)が決めたスケジュールに沿って一斉にエントリーを募集したり、選考スケジュールを組んだりして、3月〜10月にかけて選考が行われます。
日本の若年層の失業率が諸外国と比較して低いことは、新卒一括採用という日本独自の取り組みが要因であるとも言われています。
<15~24歳層の失業率>(出典:OECD.Stat2017)
日本 | アメリカ | イギリス | フランス | ドイツ | 韓国 |
4.6% | 9.2% | 11.8% | 21.6% | 6.8% | 10.3% |
(引用:厚生労働省「多様な人材の確保のために通年採用や秋季採用の導入も検討してみませんか?」)
近年の通年採用に対する企業の動き
通年採用への関心は年々高まっています。2020年に一般社団法人 日本経済団体連合会が発表した「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」によると、新卒採用において通年採用を実施している企業は16.5%で、「実施予定」「検討している」と合わせると58.6%と約6割に上ります。また、今後5年前後の方向性として「通年採用を現状維持・実施意向のある企業」も約3割存在しており、増加傾向にあることが分かります。
通年採用の中身としても「通年を通して採用活動を継続する」企業と「年間で複数回の採用活動を行う」企業に分かれています。いきなり通年採用を取り入れるのではなく、これまで4月入社のみだった採用活動を4月・7月・10月と徐々に増やしていくなど、ステップを踏みながら取り入れている企業が増えています。
(引用:一般社団法人 日本経済団体連合会「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」)
採用側からみる通年採用の3つのメリット
・多様な学生を漏らさず採用できる ・学生と自社の相性をじっくり見極められる ・人材の補填ができる |
企業にとって通年採用のメリットは大きく3つあります。新卒をはじめとする若年層の採用活動が難しくなっている中で、通年採用を取り入れるとよい理由を踏まえて紹介していきます。
多様な学生を漏らさず採用できる
留学経験のある学生や、帰国子女など人とは違った経験をしてきている人は、優秀であっても、企業が春季の一括採用しか行っていないと採用から外れてしまいます。通年採用にすることでこのような優秀でポテンシャルの高い学生を採用対象にできます。また、通年採用を実施する外資系企業やベンチャー企業への人材流出を防ぎ採用競争で負けないことにもつながります。
学生と自社の相性をじっくり見極められる
通年採用は、マッチング率の高い採用活動が可能になります。理由としては、期間に限定がなくスケジュールにゆとりがあるため、学生のスキルや適性を丁寧に判断する時間を確保しやすいことが挙げられます。一括採用の場合、4月1日入社といった期限があるため、終盤の採用スケジュールに無理が生じ、ミスマッチのある学生の採用も発生するケースがあります。
人材の補填ができる
通年採用の場合、一括採用よりも人材を補填しやすいです。理由としては、通年採用であれば常に応募を集め続けることができ、採用数をコントロールしやすいことが挙げられます。また、内定辞退が発生した場合も、リカバリーを素早く行える点もメリットです。
一方、一括採用の場合、エントリーの段階で十分な応募がなければその後の採用目標をクリアするのが難しくなっていくでしょう。
採用側からみる通年採用のデメリット
・一括採用希望の学生を逃す可能性がある ・早期内定者は入社までに辞退する危険性がある ・採用に割く時間やコストが増える可能性がある |
企業にとって通年採用を行う際のデメリットは大きく3つあります。起こりうるデメリットを把握して対策につなげましょう。
一括採用希望の学生を逃す可能性がある
通年採用の企業は、一括採用と比較して優先度が下げられてしまうリスクがあります。いつでも応募できる半面、ダメな時の滑り止め企業になる可能性もあるからです。
対策としては、あくまでも一括採用のスケジュールをメインスケジュールとし、他の時期の採用枠は少なく用意しておくなど、両軸のバランスを取るとよいでしょう。
早期内定者は入社までに辞退する危険性がある
通年採用の場合、内定から入社時期に期間が空いてしまうケースがあります。その間に他企業の採用活動を並行させている学生は、他の企業からの内定を受けて、こちらの内定辞退をする可能性があります。
対策としては、自社に対しての志望度をキープしてもらうために、SNSを活用したり、メッセージのやり取りを定期的に行うなど、こまめなフォローを行うとよいでしょう。
採用に割く時間やコストが増える可能性がある
通年採用は、長期間の採用活動となるため一括採用に比べて採用コストがかかります。人事担当の他にも面接を依頼する上司や役員の時間も割く必要があります。
そのため、あらかじめ一括採用よりも綿密な計画立てをしておくのがおすすめです。募集にかかる求人広告費用や人件費などを洗い出しておくようにしましょう。
通年採用を望む学生の割合
文系 | 理系 | |
---|---|---|
男性 | 66.6% | 55.4% |
女性 | 64.7% | 51.3% |
厚生労働省が2017年に行ったアンケート結果によると、60%以上の学生は通年採用もしくは秋季採用を望んでいることが分かります。
現状、春季の一括採用のみ実施しており、人材不足に悩んでいる企業は、通年採用や秋季採用を導入することで人材補填ができるだけでなく、優秀な人材を獲得できる可能性があります。
通年採用を実施している企業
通年採用を実施している企業は年々増加しています。本章では、実際に導入している企業を7社紹介していきます。
株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)
株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロやGUを展開しているアパレルメーカーです。同社の通年採用は、大学生1年生から応募することができ、「FRパスポート」の発行という、発行から3年間いつでも最終面接を受けることができる独自の取り組みも行っています。また、不採用だとしても年度が変われば繰り返しチャレンジすることができ、間口の広い採用活動を実施しています。
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社は、2015年から「ユニバーサル採用」と名づけられた通年採用を導入しています。いつでも必要なときに、必要な人材を採用するという普遍的(ユニバーサル)な採用を目指した採用手法です。新卒採用は4月と10月、キャリア採用は随時入社時期を設けて、2軸で多くの採用につなげています。
ソニー株式会社
ソニー株式会社は、ゲームやネットワークサービス・音楽やエンタテインメント、金融など幅広い事業を展開している大手企業です。通年で複数職種の求人を募集しており、既卒3年までであれば新卒として採用枠を用意しています。キャリア採用についても随時募集を行っており、ジョブマッチングを開催するなど新卒・中途問わず企業の魅力をアピールする仕立てに長けています。
Zホールディングス株式会社
Zホールディングス株式会社は、「Yahoo!JAPAN」を運営しているソフトバンクグループの連結子会社です。
2016年10月から新卒の一括採用を廃止しており、30歳以下であれば経歴問わず応募可能な「ポテンシャル採用」を通して通年採用を行っています。留学生や博士号取得者といった貴重な経験を積んだ学生を逃さないためという、通年採用の強みを最大限理解して取り組んでいます。
楽天グループ株式会社
楽天グループ株式会社は、インターネットサービス・金融・モバイルなど生活のインフラサービスを中心に展開している企業です。2015年から開発職において通年採用を開始しており、新卒・中途問わず随時募集を行っています。とくにインターネットサービスを支えるエンジニア募集を強化しており、海外からも優秀な人材を集めるために時期を限定しない採用活動を行っています。
パナソニック株式会社
パナソニック株式会社は、日本が誇る有名な電機メーカーの1つです。2021年から通年採用を本格化させており、6月・7月以降であっても応募・選考を受け付けています。研究で多忙な理系学生は、就職活動に十分な時間を割けないケースがあります。そうした優秀な学生からの応募を集めるためにも、通年採用の取り組みを続けています。
株式会社良品計画
株式会社良品計画は「無印良品」を展開している製造小売業の企業です。同社は2021年から通年採用を導入しており、常時エントリー・選考受付を行っています。学生向けの定時入社コースと、既卒者随時入社コースの2つが設定されていて、入社時期を縛らない採用活動として注目されています。エントリーから最短で1カ月後に入社することもでき、スピード感のある採用フローが特徴的です。
キャリア採用で優秀な人材を採用しよう
通年採用を取り入れている企業は、まだまだ大手企業・外資系企業が多い状態です。しかし、優秀な人材を獲得する手法として通年採用は積極的に取り入れていきたい採用手法といえるでしょう。
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