「ゆでガエル」とは熱湯に放り込まれたら驚いて逃げるカエルも、常温の水に入れられて少しずつ温めたらぬるま湯から熱湯へと変化する過程に気づかず、逃げ損なって死んでしまうことから「ゆでガエル理論」や「ゆでガエルの法則」として用いられる言葉です。実際には熱湯に入れたカエルは死んでしまい、水から温めたら途中で変化に気づいて逃げ出すという説もあり、あくまで寓話をもとにした教訓として使われます。
イギリス出身でアメリカに渡り1950年~70年代に活躍した人類学者のグレゴリー・ベイトソン(1904年~1980年)が唱えた法則とされ、日本では『組織論』(桑田耕太郎、田尾雅夫/1998年)にて「ベイトソンのゆでガエル寓話」と紹介されました。2013年にはアメリカのコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した報告書で経営が悪化していた当時の韓国経済を「ゆでガエル」と評して話題になりました。
ゆでガエル理論は人にありがちな現状維持を好み、「後でやろう」、「今すぐに取り掛からなくてもよさそうだ」と大事なことを後回しにする傾向や、ゆっくり迫る危機には気づかずのんびりして対応しないうちに一大事となるリスク意識の低さを指摘しています。企業においても業績の悪化を景気のせいにして、顧客ニーズとのずれに気づかないうちに経営が傾いてしまわぬよう教訓としているようです。
また地球温暖化など地球環境問題について、「ゆでガエル理論」を用いて警鐘を鳴らす人も少なくありません。一方では1957年から66年生まれを指した「ゆでガエル世代」という言葉も生まれました。この世代はバブル経済の好景気とバブル崩壊、リーマン・ショックを経験しており、特に会社勤めの場合は終身雇用による「安泰」からの「リストラ」という過酷な現状を知っているため「ゆでガエル」にたとえたものです。 企業がゆでガエル状態にならないためには、社員全員が危機意識を持ち率直に意見を出し合えるチームワークや関係性を構築する必要があります。さらに売り上げ目標に対する進捗率などをデータによって客観的に把握することで、知らないうちにリスクを見逃してしまう「ゆでガエル」状態を回避できます。これは個人にとっても同様なので、日頃から自分の状態を客観的な視点で把握するようにしましょう。