アセスメントは「評価」や「査定」を意味する言葉であり、ビジネスで使用されるときには「対象物に関する客観的な評価をすること」を意味します。この記事では、多くの業界で使用されるアセスメントについて、主に人事の分野における効果や具体的な取り組み方法などについて解説します。
目次
アセスメントとは
アセスメントとは、英単語の「assessment」が語源であり、直訳で「評価」や「査定」、「査定額」、「税額」を意味します。そこから転じて、ビジネスにおいて使用される場合は「対象物を客観的に評価することにより対策を打つこと」という意味で使用されます。
例えば、人事の分野で「アセスメント」といった場合には、個人の能力や性格を客観的に評価し、その人にあった役割を与えることを言います。一方、福祉や看護の分野で「アセスメント」と言った場合には患者の状態を客観的に評価し、適切な処置やサービスを行うこと、という意味になります。このようにアセスメントの用途は広く、業界によって意味や使われ方は異なっています。
アセスメントと似た意味を持つ言葉に「エバリュエーション」や「オプティマイズ」、「モニタリング」があります。
アセスメントが使われる分野
アセスメントは以下の表のようにさまざまな業界・分野で使用されています。どの分野においても、客観的に評価・分析して適切な対応を行うことを目的としている点は共通しています。
アセスメントの種類 | 説明 |
---|---|
人材アセスメント | 個人の特性や能力を客観的に評価できるため、人材採用や配置転換において客観的な視点を取り入れられる。 |
組織アセスメント | 組織の中にどのような特性や能力を持った人材が多いかを把握できるため、不足する人材のタイプや、活躍している人材のタイプを分析できる。 |
リスクアセスメント | 職場での労働災害を防ぐために行われる。職場にある危険性や有害性を特定・評価し、その評価に応じて対策することで、大きな労働災害を防ぐ。 |
環境アセスメント | 大規模な開発事業などを行う際、それが環境にどのような影響を及ぼすかを事前に調査・評価することで、適正な環境配慮を行うための一連の手続きのこと。 |
福祉アセスメント | 介護利用者や家族のさまざまな問題やニーズに対処し、適切な支援やサービスを提供すること。 |
看護アセスメント | 患者との対話や観察、検査結果をもとに、問題やリスクを特定し、適切なケアや治療戦略を立案すること。 |
人事分野におけるアセスメントの効果
アセスメントはビジネスにおいて使われることが多くあります。ここでは人事の分野において、アセスメントを行うことで得られる効果をご紹介します。
採用におけるミスマッチ防止
採用において、求める能力を持った人材か、自社に合う人材かを見極めることは非常に重要ですが、数回の面接や試験で見極めるのは困難です。自社に合わない人材を採用してしまえば、早期退職に繋がったり、活躍できないまま無駄な人件費を負担し続けたりすることになります。「人材アセスメント」を行うことによって客観的な評価ができれば、ミスマッチを防止することが可能です。
また、「組織アセスメント」によって各部署の特性や活躍している人材を分析しておけば、新規採用者が能力を発揮しやすい部署を選定することも容易になります。
個人の適正を考えた人材配置
人材の配置を検討する際に、客観的な基準がなく主観的な評価のみで行ってしまうと、先入観や対象者に対する感情が影響し、正しく判断できない可能性があります。特に管理職の選出は、現在の仕事ぶりを観察するだけではリーダーシップを取れるか、マネジメント能力があるかを判断することが難しい場合もあります。上手くいかなかった場合には社員の不満に繋がり、結果的にその部署の生産性が落ちることにもなりかねません。
「人材アセスメント」で客観的に個人の能力や特性を把握し、「組織アセスメント」によって最適な部署に配置することで、一人一人の社員が活躍できる人材配置が可能になります。
効率の良い人材育成
「人材アセスメント」によって客観的に個人の能力や特性を把握することで、それぞれの強み・弱みを把握し、人材育成に生かすことができます。「組織アセスメント」も活用すれば、現在の部署で活躍できていない人材も、能力や特性が合う部署に異動することで活躍できるようになる可能性もあります。
また、将来のリーダー候補を育成するにあたっても「人材アセスメント」は活用できます。候補者の選出をする際に客観的な評価に基づいて行うことでミスマッチを防ぐことができ、育成方針を決める際にも役立てることができるでしょう。
アセスメントの取り組み方法3選
ここまでアセスメントの意味や効果について解説してきました。ここからは実際にアセスメントを行うにあたり、どのような方法があるのかを見ていきましょう。
適性検査
適性検査は、テスト形式で行い多数の質問に答えてもらうことで個人のパーソナリティ(性格)や興味、関心、能力を分析するものです。採用試験において実施する企業も多いため、受験した経験がある方も多いでしょう。
適性検査にはさまざまな種類があり、一般的な能力を調べる検査、性格を調べる検査、職種別に適性を調べる検査、管理者向けの適性検査、中堅社員向けの適性検査など多岐にわたります。目的によって適当なツールを選ぶのが良いでしょう。
360度評価(多面評価)
360度評価(多面評価)は、対象者の上司だけでなく、同僚や部下、他部署で対象者と関わりがある社員、取引先の社員など幅広い人達からヒヤリングを行い、評価に反映させるものです。
部署を問わずさまざまな立場の人から意見が聞けるため、評価に偏りがなく、評価された対象者にとっても納得感の高いものになります。一方で、対象者の悪い部分を言いづらかったり、評価者の主観や好みが入りやすかったりするデメリットもあります。
アセスメント研修
アセスメント研修は、普段の業務と近い状況を数種類シミュレーションし、その中で対象者の言動を観察・評価する方法です。アセッサーという特別な訓練を受けた評価者が、さまざまな状況下で対象者がどのような行動を取るか観察し、決められた評価項目に基づいて評価を行います。
複数人を同じ状況下・同じ評価項目で評価すること、第三者である専門家による評価であることから、客観的で公平な評価を下しやすいと言えます。
アセスメントを活用し、社員が活躍できる土台づくりを
アセスメントはあくまでも客観的な評価を行うことであり、対象者をどう生かすかは人事担当者にかかっています。活用できれば社員の活躍を促しモチベーションを高め、会社全体の生産性を上げることも可能です。
評価した結果から改善点や課題を把握し、対象者本人にもよく説明し納得してもらった上で進めていきましょう。