日本人材ニュースでは2013年日本の雇用情勢と人材業界の展望について、主要人材会社100社のトップに対しアンケート調査を実施した。景気の先行き不透明感もあって、「改善する」と「悪化する」という見方が交錯する結果となった。
日本の雇用情勢「良くなる」「悪くなる」がともに増加
昨年前半は欧州金融危機の影響で、世界経済も先行き不透明感が続いていた。また、米国、中国、韓国、ロシア、フランスなど、主要各国のトップの選挙が相次いで実施され、新たな政治体制に入った。日本もまた2012年12月の総選挙により、民主党から自由民主党に政権が移った。
このような政治経済の変化のもとでの2013年日本の雇用情勢予想となったが、日本の雇用情勢が「良くなる」(3%)と「やや良くなる」(41%)を合わせ、改善するという回答が44%と最多となった。昨年1月の調査より5ポイント上昇している。
一方、「悪くなる」(0%)と「やや悪くなる」(23%)を合わせ、悪化するという回答は23%だった。昨年比では、こちらも8ポイント上昇している。「横ばい」は33%で昨年比13ポイントの大幅減少となった。
新卒採用と中途採用の予想をみると、新卒採用では「増加する」(15%)と「やや増加する」(23%)を合わせ、新卒採用数が増えるという回答は38%で昨年比8ポイントの増加。 「減少する」(0%)と「やや減少する」(8%)を合わせ、減少するという回答は8%となり昨年比13ポイント減少。新卒採用の改善を予想する傾向が強まった。
中途採用では、「増加する」(8%)と「やや増加する」(36%)を合わせて44%が増加を予想した。昨年比では1ポイント上昇して、ほぼ同じ割合となった。 減少するという回答は「減少する」(0%)と「やや減少する」(23%)を合わせて23%で、昨年比5ポイント上昇した。
中途採用数が減少するのではないかという見方を示しているのは、人材業界の大手2社である。「昨年10月以降、景気の減速感の影響を受け始め、企業の採用基準も上がってきている」(峯尾太郎インテリジェンス常務執行役員)、「景気の不透明感から先行きが非常に予測しにくい状況。2012年秋口からの動向から、かなり厳しくなる」(リクルートキャリア社外広報担当)
企業の課題は、引き続き「グローバル人材の採用」
今年の企業の人材採用の課題は、昨年に引き続き「グローバル人材の採用」となりそうだ。少子化による日本の消費市場の縮小や円高の流れを受け、昨年以上に日系企業の海外進出が加速し、グローバル人材の需要が高まりそうだ。
「特にこれまで内需型であったサービス、消費財、小売などが積極的にアジアなど新興国に進出する採用動向が見られる」(マイエット・アンドリーセ ランスタッド副社長)
「海外進出案件の依頼は引き続き拡大し、海外事業経験者・日本人留学経験者・外国人留学生等のハイポテンシャルなグローバル人材の採用ニーズはさらに増していく」(藁沢伸康ディスコキャリアエージェントカンパニー長)
個別では、「医療資格者の不足」「障がい者雇用」「復興需要」などの採用の課題が上がっている。
医療資格者の不足は、「超高齢化社会を背景に高齢者の外来患者は過去最多となっており、医師、看護師、薬剤師をはじめとする医療資格者の人手不足状態は本年も続く」(菊嶋一枝ウイングメディカル執行役員)と深刻な状態に陥っている。
障がい者雇用は、4月に施行される「障害者雇用促進法」で新たに従業員50人以上の中小企業にも2%以上の障がい者の雇用が義務付けられることから、障がい者採用が一層進むことが予想される。
自民党政権の景気対策で注目される復興需要
自民党政権の積極的な公共事業投資と復興需要で、関連する職種では人材不足になることもありそうだ。
「復興需要や海外工場建設の需要で、建設業の技術者によっては人材が不足し、売り手市場となる」(髙本和幸ヒューマンタッチ人材紹介営業部部長)
「復興関連・修繕維持事業の需要が今しばらく続き技術者ニーズが高止る」(兒玉彰プロフェッショナルバンク社長)という状況で、今後、自民党政権がどのような景気対策を打ち出すかが注目される。
SNSを活用したダイレクト・リクルーティングが始まる
昨年は「ダイレクト・リクルーティング」も話題となった。採用コストの削減させるために、自社でリクルーティング担当者を多数採用し、LinkedInなどのSNSを活用して採用活動を進める企業が外資系を中心に現れ始めた。
リクルーティング担当者の人件費等のコストと比べて、どの程度有利な採用ができてくるのか注目されるところだ。
このような傾向から、今年は昨年よりも採用の難易度が高まることが予想される。人材会社に期待される役割も、専門性が高い高度な人材をピンポイントで探し出し、求人企業と人材の最適なマッチングを図ることが、さらに要求されてくるだろう。コンサルティング能力を高めて企業の要望に応えることができるのか、正念場となりそうだ。
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